すっかり暗くなった空には昨日より少し丸に近づいた月が浮かんでいる。

公園の前に着き息を整えると彼を探した。

怖い気持ちはまだ残っていてでも、

ちひろの兄弟だと思うとその気持ちが少しは薄れた。

「こんばんは」

彼が先にわたしを見つけ、声の方へ視線を移すと老木を背に設置されたベンチに座っているのが見えた。

「こんばんは」

挨拶をして座ろうとするけれど彼の隣に座る勇気はない。

そんなに大きくない木製ベンチでは距離が近すぎる。

わたしは荷物があることを理由に彼と少し離れた場所に設置されたベンチに荷物を置くと座った。