少しの沈黙の後、ちひろは呟いた。

「それから理斗は毎日猫にご飯をあげてた」

また少しの沈黙の後、ちひろはいじけた声でそれを言った。

「理斗はすぐに人を傷つけるけど、本当は……思いやりのある優しいやつなんだ。

だから僕は理斗が嫌いなんだよ」

「えっ…」

そうなるんだ……。

「誤解されても嫌われても平気な顔をしてる。

他人にその優しさを理解してもらえなくても構わないと心が常にそう言ってる。

どうしてそんなに強く居られるの?どうすればそんなに強くなれるの?

僕も理斗みたいに強くなったら真琴は僕のことを好きになってくれる?」

ちひろはわたしの背中に両手を回すと肩に顔を埋めた。

わたしはちひろの小さな頭を撫でた。

「ちひろにはちひろの優しさと強さがある。だから大丈夫だよ」

「本当に?」

「うん、本当に」

「真琴がそう言うなら」

ちひろがどうしてそんな話をわたしにしたのかはわからない。

けど、可愛いちひろが戻ってきて嬉しかった。

わたしにしがみつくちひろの両手が愛おしくて仕方がなかった。