瑞樹は本棚の前に行くと一番下の左端を指差す。

「真琴、ここにあるスケッチブックを取ってくれる」

「うん」

「それを開いてくれる」

瑞樹に言われた通りスケッチブックを開いた。

「うわっ可愛い!」

そこには木製の椅子に座るクマの絵が描かれてある。

「ちひろにプレゼントする為に描いたんだ。

ずっと昔にちひろからクマの絵を描いてと頼まれて、

でも完成した時には渡せるような関係じゃなくなっていて。

それからも、暇はあればいろんなバージョンを描いたりして」

「全部見てもいい?」

「どうぞ」

ページを捲るとたくさんの風船を持つクマが現れ、

次のページでは花束を持っているクマ、

次はブランコに乗っていて、

その次はたくさんの仲間と演奏会、

その次はテーブルを囲んでディナー、

その次はおしゃれをして外国の町を歩いている。

白紙を挟んで次のページをめくると桜の下で仲間とピクニック、

次のページは浮き輪をつけて海に浮かび、

次のページでは木の下に積もった落ち葉の上で眠っている。

そして最後のページはみんなで雪だるまを作っていた。