笑いが起こる中、瑞樹が笑顔で話す。

「こんな光景初めて見たよ」

「こんな光景?」

わたしはみんなの方に目線を向けたまま、できるだけ口を動かさず小さな声で話す。

「うん。兄弟でこんな風に食事をするとか僕達は一度もしたことがなかったから。

こんなにたくさん兄弟が居るのにずっとバラバラだった。

両親が居ないことが多いし、もっと兄弟だけでいろんなことができた筈なのに。

今日のこれを提案したのは誰?」

「ちひろ」

「そうか、ちひろはずっとこんなことがしたかったのかもしれないね。

真琴のお陰でやることができたんだ」

「えっ?わたしのお陰?」

「真琴は僕達兄弟の中心的な存在になっているんだよ」

「わたしが?」

瑞樹はわたしの目を見て「そう」と言うとちひろ達に視線を移した。

その横顔は愛おしいものを見るように優しく穏やかだった。