「おはよう」

朝、学校に向かう途中、角を曲がりちひろの家の通りに出るとそこに彼が居た。

「朝だったら怖くないかなって」

首を傾けるとにこっと笑う彼。

さらりと揺れる細く茶色いストレートの髪の毛にはあまりにも見覚えがあった。

「ちひろと同じ髪の毛……」

「おっどろいた……」

ちひろと顔は似ていないけれど、驚いた顔をするとどことなく目の雰囲気が似ている。

「もしかして……ちひろと兄弟とか?」

うなずく彼。

お互い家族のことはほとんど話さないで来たけれど、

まさかちひろが兄弟を亡くしていたとは。

彼は「まだ、僕のこと怖い?」と不安そうな顔をする。

怖くないと言ったら嘘になる。

それでも首を横に振ると彼はほっとした顔を見せた。

「ちひろには僕のこと話さないで欲しいんだ」

わたしがうなずくのを確認すると彼は話を続ける。

「明日、学校が終わったら話せる?」

「えっと明日はアルバイトがあるから9時くらいになるけど……」

「じゃあ、この道路の一本向こうに公園があるからそこで待ってるよ」

 彼と別れ、ちひろの家の前に差し掛かると早足で通り過ぎた。

今はちひろと会うのが気まずかった。