「あっ理斗、ちょうどいい」

「こき使う気か?」

「違うよ!」

「じゃあ何?」

ちひろと理斗君が話すところを初めて見た。

お互いつっけんどんでハラハラする。

「あのね、今真琴にも話したんだけど、今日の夕食は中庭で食べることにしたの。

いろんなもの焼くんだよ。

食材は僕が買ってくるの、理斗の分もだよ。

そういうことだから」

なんともぎこちない誘い方だ。

「どういうことだよ」

理斗君はコルクボートのプレートを裏返すと横目でちひろを見た。

「だから……理斗も一緒にいろいろ焼こうって言ってるの。

何でわからないかなぁ!」

駄目かな……。

仲介に入ろうとした瞬間、理斗君が鼻で笑った。

「コンロはあるの知ってるけど炭は?」

「どうだろう?無いかも。あったとしてもずっと前のだし……」

「じゃあそれは俺が準備する」

「ありがとう」

急に話がスムーズに進んだ。

「何か必要なものがあったら連絡しろよ」

理斗君はわたしにそう言うと部屋を出て行った。

きっと断られてしまうと思っていたから嬉しかった。

ちひろはふぅ~と息を吐くと笑顔を見せた。

「よし!これで決まり。楽しみだね真琴」

「うん!」

「あっ花火も買ってこようかな」

「線香花火?」

「ううん、筒形の地面に置くやつ。あれをいっぱい買ってこようかな~って」

「えっあれは高級花火だよ、そんなにいっぱい買ったら凄い値段になるよ」

「そうなの?20個買ったらどのくらい?10万とか20万とか?」

うぅ…金銭感覚違い過ぎる……。

「そこまではしないよ」

「そう、じゃあ大丈夫」