話し終わる頃には徐々に空が白んできていた。

わたしの話をうなずきもせずに黙って聞いていた理斗君が消え入りそうな声で話す。

「中村に気持ちを伝えなければ瑞樹はどうなる?」

「わからない。だけど、うまく説明できないけどそんなことはしちゃいけないっていうか……そういった強烈な何かを感じるんだよ。

それと、全部こうなるように導かれているような気もする。

わたしが偶然を装って中村さんに声を掛けた日から今日までの流れがあまりにスムーズだったから」

「そうか。お前がそう言うならそうなんだろうな」

理斗君はわたしを見つめると「今まで1人でよく頑張ったな」と言う。

わたしは頭を横に振った。

「ううん、1人じゃなかった。

どうしていいかわからない時はいつも、

理斗君の顔が浮かんだ。

こんな時理斗君だったらどうするんだろうって考えて、

そうしたら答が見つかった」

短い沈黙の後、理斗君が薄く口を開く。

それはさっきよりももっと消え入りそうな声だった。

「お前……今の俺にそれ言うの……無し」

理斗君は椅子から立ち上がるとわたしの頭にそっと触れ、

そして部屋を出て行った。

 わたしはまた瑞樹の隣に行った。

もうわずかしか残されていないかもしれないから、少しでも長く傍に居たい。

瑞樹の綺麗な顔をじっと見つめた。

そして、胸の上に乗った手に自分の手を重ねる。

流れに逆らうような行動はしてはいけないという、

わたしと同じ何か強烈な信号のようなものを瑞樹も感じているのだろうか。