わたしは立ち上がるけど足がしびれていてうまく歩けない。

理斗君は絵の前に立つと「ローテンブルクのプレーンライン」と呟く。

「知ってるんだ」

わたしはしびれた足を立ったまま片方ずつトントンと叩いていた。

「お前が描いたのってどこ?」

「ここの木組みの建物と手前の石畳かな」

理斗君はイーゼルの前の椅子に座るとわたしを見た。

「もしかして……居るの?そこに」

「えっ?」

「瑞樹……」

理斗君はベッドの方に目を向けるとわたしに目線を戻した。

「ど、どうして」

「それ以外説明が付かないから」

「どういうこと?」

「こんな風にお前は描けないよ」

「いや、わたしが描いたんだけど……」

「色は?どうやって瑞樹が描いた部分と合わせた?

色作るの苦手って言ってたよな。

部屋の絵も色は全然違った。

なのにこの絵はまるで瑞樹に配合を教わったみたいに正確」

わたしは何も言えず下を向いた。

理斗君は話を続けた。

「ちひろからここには入るなと言われていたのにそれを破るのも、

勝手に絵の続きを描くのも、

お前らしくないと思ってたんだよ。

で?瑞樹は今、どうしてる?俺達の話を聞いているの?」

もう嘘はつけなかった。

「寝ている」