それからどのくらいの時間が経ったのだろう。

時間の長短がわからない。

ずっと思考が止まっていた気がする。

「真琴……」

瑞樹に呼ばれ、窓の外を眺めたまま返事をした。

「僕は今、僕が存在していることや、僕の思いを岬に伝えることはしない方がいいんじゃないか、なんて考えているよ」

あまりにも意外な答えに瑞樹の方を向く。

瑞樹は膝の上に置いた自分の両手を見つめていた。

「どうして?」

「それを知ることで、岬がますます苦しくなってしまうかもしれないから」

「どうして岬さんが苦しくなってしまうの?」

「きっと今は辛いかもしれないけど、その辛さはいずれ時間とともに薄れていくと思う。

けれど、今僕がまだ存在していることを知って、僕の思いを岬に伝えたとしたら、

それは岬の中で強烈なインパクトとなって残り続けると思うんだ。

僕はその強烈なインパクトだけを残して岬の前からまた、消えることになる」