夜、瑞樹のところに行く時間まで部屋で絵を描いているとドアをノックする音が聞こえ返事をすると現れたのは理斗君だった。

「これ、前に貸してって言ってただろ?」

わたしはスケッチブックを床に置くと差し出された参考書を受け取った。

「あっ覚えてくれてたんだありがとう」

「勉強しろよ」

そう言って理斗君は床に置いたスケッチブックを手に取った。

「お前絵描くの好きな。何で部屋の絵?」

「思い出に。こんな素敵な部屋で過ごしたんだなぁ~みたいな」

理斗君は絵と部屋を見比べる。

「細かいところまで全部正確、でも色は全然違うのな」

「色作るの苦手なんだよね、ペンダントライトの深緑も何度作り直してもそんな感じにしかできなかった」

「それでもかなり上手いけどね。

全く同じなら写真でも良くなってしまうし」

「えっありがとう、理斗君に褒められると嬉しい」

理斗君はわたしにスケッチブックを差し出すと「勉強しろよ」と言って部屋を出て行った。