雲のイルカはすぐさま形を変えていく。

わたしは何かの形に見える雲を探した。

きっとちひろもそうで、けれどどこを見てもそれらしい雲はなかった。

「真琴、そろそろ帰ろうか?」

「うん、そうだね」

 立ち上がると直ぐにちひろの指が頬に触れる。

それはわたしの顔にくっついた髪の毛を寄せる仕草。

もう何度もこうしてちひろの手がわたしの頬に触れたからわかる。

なのに今、頬に触れるちひろの手に緊張している。

この緊張がちひろに伝わってしまわないように振る舞ったつもりだけど、

ちひろは気付いたかもしれない。

もう、ちひろが男の子であることを意識しないで接することが出来なくなってしまいそうだった。

そして今までの関係には戻れないのだと感じた。

「僕達の関係はきっと変わるんだ」

「えっ」

まるでわたしの心の声が聞こえているかのようなちひろの言葉にドキッとした。

───僕たちの関係はきっと変わるんだ。

ちひろはそれを望んでいて、

わたしは望んでいない。

小さくて華奢で女の子みたいに可愛いちひろがすでに恋しいのだから。