ちひろの気持ちを知って言葉が出てこなかった。

わたしは一度もちひろをそんな風に意識したことがなかった。

それどころか歳は上だけど弟のような、何なら妹のような存在だった。

恋愛感情を抱くことはない、けれどとても大切な人。

それがちひろに対するわたしの思い。

「真琴と居るとね、花が綺麗とか風が気持ちいいとか季節の匂いとか、そういうことに気付けるんだ。

僕の欠けているところとかヒビが入っちゃったところを埋めて治して、

そして忘れていたものに気付かせてくれる。

だから真琴が傍に居てくれないと僕は駄目なんだよ」

ちひろはわたしの肩に頭を乗せると呟くように言った。

「いいよ、今は理斗でも……」

「えっ……」

ちひろのそれは、わたしが理斗君を好きだと思っての発言。

どうして?と思うのにわたしの口からそれを否定する言葉は出ない。