岬さんには先に帰ってもらい、黒板の絵を消していると急に呼吸が苦しくなった。

黒板の絵が歪む。

瑞樹との別れの日が、もうすぐそこまで来ている。

いつだって時間は早く進んで欲しかった。

1日が長くて仕方がなかった。苦手な数学の授業は時計が止まっているような気さえした。

春休みの前も夏休みの前も冬休みの前もクリスマスの前も誕生日の前も、早く来て欲しいとあれほど思っていたのに、今は時間が進むことが嫌で、怖くて、止まって欲しいと願っている。

 顔が熱くなり、その場にしゃがみ込むとうずくまった。

静まり返った教室の中、できるだけ静かに呼吸をしようとしても抑えきれない。

何かが壊れてしまったかのように溢れる涙を、止めることがどうしてもできなかった。

そして諦めた。

泣けるだけ泣いた。

瑞樹の前では泣かないと決めて。