「わたしも、瑞樹が好き、それは今も変わらない」

大粒の涙が零れ落ちる。
 
 外からは生徒達の賑やかな声が聞こえてくる。

わたしは机の落書きをじっと見ていた。

岬さんは下を向いたまま呟くように話す。

それは、外から聞こえてくる生徒達の声にも負けてしまいそうなほど小さな声だった。

「わたしは瑞樹を死なせてしまったの……大好きで大切な人だったのに……」

また、大粒の涙が流れ落ちる。

わたしは岬さんを気の毒だとは思わない。

じゃあなんで?と思うから。

 コンクールの日、元恋人の車に乗り込んだ岬さん。

彼に肩を抱かれ人目を気にしてきょろきょろしていた。

瑞樹がどれほどショックを受けたかも知らずに。

「中村さん、あさって何時でも構わないから会えないかな?

瑞樹のことでもっと話したいから」

明日とあさっては振り替え休日となっている。

明日でもいいのにあさってにしたのはわたしのわがまま。

「あさってはピアノのレッスンと夕方から家にお客さんが来るから……残念ながら夜7時まで予定が詰まっている」

「いいよ、7時過ぎでも」

わたしは、はっきりとした時間と場所が決まったら連絡すると岬さんに伝えた。