階段に座っている理斗君の少し離れたところに座った。

「お前、いつもその距離な」

「ん?」

「微妙に遠いところに座んの、まぁいいけど。ところでさ」

「あっ、はい」

「何だよ、構えんなよ大した話じゃないから」

「う、うん」

「お前好きなやついんの?」

「えっ」

「聞こえただろ?」

「あっ、うん」

理斗君の質問にすぐに答えられずにいた。

理斗君はそんな様子を見て静かに話し始めた。

「すぐに答えられないということは気になっているやつは居るってことか」

理斗君は曲げていた足を伸ばす。

砂がザッと音を立てる。

わたしは何か言葉を探すけど、理斗君がまたわたしを黙らせた。

「俺、お前のこと好きだよ」

風に吹かれた髪の毛が、きっと真っ赤になっているわたしの顔を隠してくれた。

体育館ではカラオケ大会が始まったようだ。

わたしはまだ、言葉を出せずにいる。

それは、気まずいからとか困っているからではない。

自分の気持ちがわからないから。