夜、いつものようにわたしは瑞樹の部屋で絵の続きを描いていた。

「どう?文化祭はうまくいきそう?」

「できるだけのことはやったけど、やっぱり不安はあるかな」

「意外と何とかなるものだよ。楽しくなるといいね」

「うん、瑞樹は文化祭見に来ないの?」

「遠慮しておこうかなっ」

手を止めると瑞樹の顔を見た。

「来ればいいのに」

そう話すと瑞樹は首を横に振った。

「こうして真琴と一緒に過ごす時間を僕は気に入ってるんだよ」

 瑞樹が1日に行動できる時間はたったの4時間。

文化祭を見に来ても最後まで居られる訳ではないし、

わたしもずっと瑞樹と一緒には居られない。

きっと来ても楽しくはない。

瑞樹はわたしと過ごす時間を気に入ってると、気遣ってそう言ってくれたけど本当の理由はそういうことなのかもしれない。

「そうだね、わたしも夜は瑞樹と絵を描きたい。

あのね瑞樹」

「何だろう?」

わたしにはひとつ決めていることがあった。

それを今から発表しようと思う。

「文化祭が終わったら岬さんと外で会う約束をしようと思う。

日が決まったら瑞樹に言うよ。

そんなに先のことにはならないと思う。

だから瑞樹は岬さんに何を話すかを考えていて」

瑞樹が返事をすると部屋のドアが開いた。

「お前、絵描くの好きな」

「びっくりした」

そこに現れたのは理斗君だった。

理斗君は手に持った本を本棚に戻すとこっちを振り返る。

「お前無理すんなよ文化祭」

「あっ、うん」

「大変なことがあったら言えよ」

「ありがとう理斗君。心強いよ」

理斗君はにこっと笑うと部屋を出て行った。