夕食前、わたしは理斗君の部屋に行くと葵ちゃんのことを話した。

今日葵ちゃんが3人組の女子からガムの包み紙を投げられたこと、

その3人を家に呼んだこと、

そして仲良くなれたこと。

理斗君はうなずくでもなくわたしの話を黙って聞いていた。

「打ち解けることが出来たみたいで本当、良かったよ」

「お前にそんな行動力あったっけ?」

「なかった……かな」

「変わったなお前、今日も渡辺に言うこと言ってたし」

「あっそれは、前に理斗君から言われた言葉を思い出して……。

言ってみると意外にもすぐ聞いてくれてびっくりした」

理斗君は「あ~」と思い出したかのように言う。

そしてよくわからないことを話した。

「助けようとするのは前からそうか」

「ん?」

首を傾げるわたしを見て理斗君は鼻で笑うと「うまく助けられていなかったけど」と心当たりのないことを言うから「何のこと?」と聞いてみたけど話を変えられてしまった。

「文化祭の出し物、お前大変な」

「あぁ…でも頑張るつもり。でも、理斗君だって大変なんじゃない?

女子達がたくさん集まってきて」

「最悪だなそれ」

「嫌そうだね」

「常に視線感じてるってストレスだろ?

しかも間違って目が合ったりしたら悲鳴上げられてさ」

「それって好かれてるの?」

「嫌われてんじゃね?」

わたし達は顔を見合わせると笑った。

こんな冗談を言える仲になったのが嬉しかった。

 理斗君は参考書とノートを開くとペンを持つ。

「とにかく役割分担はちゃんとした方がいい。

俺もお前から言われたことはやるから」

「ごめんね勉強の邪魔して」

「お前もたまには勉強しろ」

うっ……。

「その参考書……今度借りていい?」

「あぁ」

 わたしは椅子から立つと理斗君のノートを覗いた。

今までは一言書いたメモしか見たことがなかったけれど、

そこには綺麗な字がびっしりと並んでいる。

「うわっ……理斗君の字がこんなにいっぱい……」

洋菓子店のショーケースに並ぶケーキを見ているみたいにわくわくする。

「言っておくけど今俺、引いてるからな」

「あっ!ごめんキモかった?」

「ノート食われそうで怖かった」

「大丈夫、これ以上近づかないから」