校門を出るとすぐに謝った。

「ごめんね葵ちゃん勝手なことをして」

少しすると葵ちゃんは絞り出す様な声で話した。

「どうして……真琴さん。嫌だよあの3人がうちに来るの」

「そうだよね、葵ちゃんに酷いことしてきた子達だもんね」

葵ちゃんはうなずく。その表情は日差しの降り注ぐ外の暑さとはまるで正反対に冷え切っていた。

「わたしもずっと4人組の女子から文句言われたりしていたんだけど、クラスの女の子が教えてくれたんだ。

みんな橘さんのことをよく知らないだけだよって。

知れば変わるって」

「それで?真琴さんは今、文句言われなくなったの?」

「うん。ちょっとしたきっかけでわたしに対する態度がガラッと変わったんだ」

「何をしたの?」

「調理実習でキャベツの千切りをね」

「キャベツの千切り?たったそれだけで?」

「そう、たったそれだけで。本当びっくりだよ、毎日あんなに嫌な思いしてたのにキャベツの千切りが上手ってだけで悪口を言われなくなるんだもん。

葵ちゃんはあんな豪邸に住んでるんだから、あの子達が家に来たら驚いて葵ちゃんに嫌がらせすること忘れちゃうよ」

「そう……かな。あの家が原因なんだよ……」

「みんな、あの豪邸の外側を見ているだけで中を知らない。

葵ちゃんのこともそう。知ればきっと嫌がらせをしようなんて思わなくなるよ。よし、買い物付き合ってくれる?」

「うん……」

 葵ちゃんの表情が晴れることは当然なかった。

それでも、同じ苦しみを知っているから何とかしてそこから葵ちゃんを救いたいと思った。

岬さんはわたしにそうしてくれた様に。

少し強引かもしれないけれど、誰かがそうしてくれないとわたし達みたいな人は、ただじっとうずくまっているか、何も感じていない振りをすることしか出来ないから。