わたしと一緒だ───すぐにそう思った。

それがわざと投げられたものだということも、

甲高い笑い声が自分に向けられているものだということも、

包み紙が地面に落ちる小さな音さえも聞こえるくらい神経を張り巡らせているのに、

まるで何にも気が付いていないかのように振舞ってただひたすらに校門に向かって歩いている。

もしも今、校門を出ることができても次の日にはまた同じことが繰り返される。

何度耐えても何も変わらない。

けど、変える勇気もなければ方法もわからない。

だから明日もまた時が過ぎ去るのを耐えて待つしかないんだ。

 気付けばわたしは葵ちゃんの所へと走っていた。

「葵ちゃん…」

下を向く葵ちゃんの隣に並ぶと後ろから声が聞こえてくる。

「誰?」

「さぁ?」

3人の所へ行こうとすると葵ちゃんがわたしの手を掴んだ。

「いいの」

葵ちゃんの声が聞こえなかった訳じゃないけれど、どうしてもどうにかしたくてわたしは女子3人組に声を掛けた。

「ねぇ、みんなは甘いもの好き?」

突然こんなことを言われて戸惑わない筈もなく、3人は目を合わせる。

本当は怒りたかった。

“今度またこんな事をしたら先生に言うよ”と脅したかった。

“家に行って両親に報告するから”でも良かった。

それを言えばこの子達は葵ちゃんに嫌がらせをしなくなるかもしれない。

けど、葵ちゃんが学校で1人なのは変わらない。

戸惑う3人を前にわたしは話を続けた。

「あのさ、わたしに協力してくれない?」

すると、包み紙を投げた女子が口を開いた。

「協力して欲しいって何をですか……」

「もうすぐうちの学校で文化祭があるんだけど、クラスでカフェをやることになってそこで出す飲み物の試飲をしてもらいたいの」

3人はまた目を合わせる。

葵ちゃんがわたしの手をぎゅっと握る。

真琴さんやめてよ───そんな声が聞こえてきそうだったけどわたしは話を続けた。

「あっ自己紹介がまだだったね。

わたしは葵ちゃんのお兄さんの友達で、

橘真琴って言います。

ちなみに葵ちゃんの家でお手伝いのアルバイトをしています。

みんなは葵ちゃんの家に来たことある?」

無いとわかっていてそんなことを聞いた。

包み紙を投げた子が「無いです」と答える。

どうやら彼女がこのグループのリーダーのようだ。

「凄いよ葵ちゃんのおうち」

「豪邸なのは知ってます」

「中に入ると驚くよ。飲み物の試飲お願いしたいから今から1時間後、葵ちゃんの家に来てもらえる?」

包み紙を投げた子が、他の2人のしかめる顔を見て答えを出した。

「ちょっとうちら用があるん…」

わたしは最後まで聞くことをしないでもう一度、今度は顔の前で両手を合わせて話した。

「お願いできないかな?」

3人組の1人が「行ってみようか」と話すとリーダーの子がわたしを見る。

「わかりました1時間後に行きます」

「良かった~ありがとう、助かるよ」