そこで綾音さんが声を上げた。

「いいじゃん岬の提案」

影響力のある綾音さんの発言に女子達が賛同する。

「そうだね!」

「面倒臭そうだけどまぁいいか」

「どうせ何やっても面倒だし」

そんな言葉が飛び交う中、また綾音さんが声を上げる。

「一番面倒臭いのはレシピ考える学級委員だし」

えっ……。

わたしは岬さんを見た。

岬さんは力強くうなずくとにこっと笑う。

彼女はわたしの状況を変えようとしてくれている。

わたしをクラスの一員にしようとしてくれている。

それは少し強引で、でもこんな風にしてもらわなければわたしは何もできず黙って下を向いているだけだった。

文句を言われても聞こえないふりをする毎日から抜け出すことはできなかった。

せっかく岬さんが作ってくれたチャンスを無駄にはできない。

「わたし、レシピ考えてみます。みんなで作れるような簡単で美味しいレシピ」

気付けばそんな発言をしていた。

理斗君がわたしを見て音のない拍手をする。

ぎこちない笑顔を向けると鼻で笑われた。

「反対の意見はある~?」

綾音さんがみんなに聞くけれど反対の意見は出なかった。

綾音さんと目が合い「じゃ、じゃあクラスの出し物はカフェで決定したいと思います」そう話すと拍手が起こった。

もちろんそれはわたしに向けてじゃない。

決まったことに対する形式的なものだとわかっているけど、

自分が話し終わった直後に鳴り響く拍手に気持ちが高揚した。