─落花流水─キミの片隅より

渡辺君が「何かいいのがあったら挙手してください」そう話すと岬さんが挙手をした。

「はい!わたしはカフェがいいと思います」

岬さんの発言にすぐに反応をしたのは綾音さんだった。

「カフェって準備大変じゃない?」

クラスからは綾音さんに賛同する声が上がる。

「だよな」

「もっと楽なのにしようぜ」

わたしだったらこんな風に言われたら下を向いて黙ってしまう。

だけど岬さんは違った。

「大変だとは思うんだけど、せっかく出し物をしても誰も来なかったらつまらないかなって」

「カフェなんて他のクラスと被る可能性大じゃね?」

「言えてる」

男子達がそんなことを話す中、岬さんは堂々と発言をする。

わたしはそんな彼女の姿をただ感心して見ているだけだった。

「被るとは思うけど、どのクラスのカフェよりも人を集めることが出来ると思うの」

「どうやって?」

「理斗に接客させるとか?」

「確かに!理斗目的で人は集まるね!」

「うちのクラスには理斗が居るんだから何やったって人は集まるんじゃね?」

当の本人は勝手に名前をあげられて不機嫌そうな色を顔に浮かべている。

嫌だろうな、そう思っていると岬さんが声を上げた。

「人を集めることができるって言ったのは理斗君の人気を利用するってことじゃなくて、

料理が得意な橘さんが居るからってことなんだけど」

えっ‼

突然名前を出され頭の中が真っ白になった。

「確かに調理実習の時凄かったもんね」

「お弁当も毎日自分で作ってるらしいよ」

そんな声が聞こえてくる中、岬さんと目が合った。

「橘さんには負担を掛けちゃうかもしれないけど、

カフェで出すメニューのレシピを考えて欲しいの。

出来るだけみんなにも作れておいしいレシピ」

「えっ…あっ…」

全員の視線が集まりあたふたしてしまう。

突然そんなことを言われて“任せて!”なんて言えるわたしじゃない。