─落花流水─キミの片隅より

瑞樹のところに行く時間になり、部屋に行くとイーゼルの前に座った。

「もう学校が始まるから本当はここでのアルバイトもおしまいだったんだけど、

金曜の夜と土日祝日はここで働けることになったんだ」

「ここに来ない日はまたあの公園で会うことは可能?」

「もちろんだよ」

瑞樹はにっこりとほほ笑むとわたしの隣に座る。

「僕はこうして1日に1回真琴と言葉を交わさないと気が済まない体質になったらしい。

時々、いや、毎日のように思うんだ、誰からも存在に気付いてもらえないままだったら僕はどれだけ孤独だっただろうって……本当に、真琴には感謝している。

そして、僕のことが見えるのが真琴、君で本当に良かったよ」

「わたしもだよ。瑞樹と出会えてよかった。

瑞樹に出会っていなかったらピアノやバイオリンの素晴らしさにも、

こんな素敵な絵にも出会えていなかった。

それだけじゃない、他にももっともっといっぱいあるんだよ、

わたしの方こそ瑞樹には感謝している」

「じゃあ、僕達はお互い様ということで構わないかな?」

「うん!」

「良かった、僕は真琴に負担を掛けているから申し訳なく思っていたんだ」

「負担じゃないよ全然」

負担な訳がない。

これはわたしがやりたくてやっているのだから。

瑞樹の為であってわたしの為なんだ。

瑞樹が居なくなった時、出来ることは全部やったと思えたら、少しは悲しみが減る気がした。

 わたしは瑞樹に、さっき理斗君に相談したことを話した。

不登校の葵ちゃんのことを瑞樹は気にしていたし、

理斗君がわたしに言ってくれた言葉が嬉しくて瑞樹に聞いて欲しかった。

それと、瑞樹に理斗君が優しい人だと知って欲しかったから。