「真琴」と瑞樹がわたしの名前を呼ぶ。

そして語られた。

「僕はやっぱり岬に悲しんで欲しくないと心から思うよ。

悲しまないでと言って『じゃあ』とはならないよきっと。

けど、そう伝えることで気持ちを切り替えることに抵抗がなくなると思うんだ」

「彼のことは?……ごめんね瑞樹、こんなことを聞いてしまって」

「もしも付き合っているのなら別れて欲しいと思うよ。

もう僕は岬の拠り所にはなれないから。

でも、そうだとしても今、僕が言った言葉に変更はないよ」

 わたしは窓に背を向けるとソファーに座る瑞樹を見た。

決意が鈍ることはないとその表情を見てわかった。

 瑞樹の気持ちが決まったことは嬉しい。

けど、同時に瑞樹との別れが近づいてくる。

「瑞樹、もう少し時間が掛かりそうなんだ。

突然瑞樹のことを話したらきっと岬さんが混乱してしまうから」

「そこは真琴、君に任せるよ」

「それと……絵が完成するまで居なくならないで……」

わたしは瑞樹に背を向けると月に目をやる。

後ろからは「約束するよ」と優しい声が聞こえてくる。

月の輪郭が歪む。

今、流れ星を見たら真っ先に願うと思う。

瑞樹とずっと一緒に居られますように───と。