ちひろは河川敷の階段に座るとズボンの裾を捲る。

わたしの制服のスカートと同じネイビーとスカイブルーのチェック柄のズボンは両方同じ幅で2回ずつ折られていく。

 隣に座ると茶色くて丸い水分をたっぷり含んだ目がこちらに向けられた。

「僕にできることなら何でも言ってよ」

「ありがとう」

わたしはちひろが年上であることも男の子であることも忘れていたりする。

でも、時々気づかされる。

「男の子が女の子を助けるって当たり前だから。

だって僕真琴よりも握力あるし」

「そうだったね、ちひろは男の子なんだもんね」

ついこんな風に言ってしまうとちひろはいじけた顔を見せた。

「そうだよぉ!これでも女の子に間違えられる回数減ったんだよ!

髪の毛もっと短くした方がいいのかなぁ?

でも頭の形良くないから短くしたくないんだよなぁ…」

細く茶色い髪の毛はちひろの白く華奢な指に引き上げられると、

サラサラと指の間から滑り落ち元居た場所に戻っていく。

女の子なら誰でも憧れる正真正銘のサラサラストレート。

輪ゴムで結んでもするりと取ることができるくらいサラサラのショートボブはちひろのイメージにとても合っていた。

「そのままがいいよ。とっても似合っているから」

「本当に?」

「本当」

「真琴がそう言うなら」

 わたし達はしばらくの間川面を眺めていた。

時々「鳥だ」とか「眩しい」とか言うくらいで特別な会話はなかった。

いつの間にかこんな過ごし方ができる仲になっていた。

「あっ真琴!もう18時過ぎちゃってる帰らなきゃ!」

7月の空はまだまだ明るく帰る時間に気が付かないで過ごしてしまう。

「もうそんな時間?ちひろ急がないと」