でもそれも違った。

ちひろと瑞樹の母親は未婚で2人を産み、その後すぐに理斗君の父親と出会い不倫関係になったという。

つまり理斗君とちひろ達に血縁関係は無いということ。

もちろんそのことをちひろは知らなくて、

だから理斗君を敵視している。

わたしは理斗君に尋ねた。

「どうして理斗君は誤解されたままで平気なの?

しかもその誤解のせいで敵視されているのに……」

答えはすぐに返ってきた。

「ちひろは何も悪くないからだよ」

理斗君の言葉に心臓が鳴った。

優しくてでもあまりに切なくて。

理斗君は「それに」と話を続けた。

「いずれ事実を知る日は必ず来る。

タイミングを見て本当のことを話すと父親も言ってる。

だから俺が言うことではないし、

今ちひろがそれを知る必要はないと思ってる。

あいつは俺を敵視することで頑張れてるんだよ、だから暫くは敵で居てやろうと思う」

理斗君はそういう人なんだ。

強くて優しい人。

「本当のことを知ったらちひろ……悲しむよね。

しかも理斗君に悪いことしたって落ち込むかも……」

わたしの問いに理斗君は「今はそれを心配しても仕方ない」と話した。