バスが来るのを待っている間わたしは頭の中を整理した。

やっぱりどう見てもあれは夏君の字で、たまたまもの凄く似ているだけかもしれないとも思ったけれど自分の目に自信がある。

でも理斗君の名前に“夏”なんて文字はひとつも入っていない。

苗字だって“葉山”

「あっ‼」

思わず大きな声が出た。

やっぱり夏君は理斗君だと確信した。

理斗君はちひろと同じ苗字だ。 

急に大きな声を出したせいでバス停に居た人全員の視線がわたしに集中する。

驚いていないのは理斗君だけだった。

「何か忘れ物した?」

「ううん」

「じゃあ何だよ」

ひとつだけわからないことがある。

どうしてあのプレートの名前が“夏”なのか。

でも、それ以外は合点がいく。

 わたしは夏君が書いたメモを手帳から取り出すと理斗君に見せた。

「これ、理斗君が書いたんだよね?」

メモを見て理斗君は「うちに手伝いに来てるのお前だったのか」と話す。

「じゃあやっぱりこれを書いていたのは理斗君ってこと?」

「あぁ。それで?何でそんなの取っておいてんの?

そのくらいの内容覚えておけるだろ?」

「あっ忘れるからじゃなくて綺麗な字だから勿体なくて捨てられなかったの」

理斗君は完全に引いている様子でわたしを見る。

「それ本気で言ってんの?」

「う、うん。キモい?」

「いや、別にいいけど、悪いな俺はお前からのメモ秒で捨ててたわ」

「そんなの全然いい、いいに決まってる」