注文が終わるとわたしは理斗君に謝った。

「そう、ごめんね。わたしが話し掛けたせいで理斗君、綾音さんから酷いこと言われてしまって……。知らなかったの、わたしと話すとあんな風に言われるって。だから理斗君わたしと話さないようにしてたんだよね。気が付けなくてごめん」

理斗君は難解な迷路を見るように顔を複雑に歪ませ、

少しすると「あ~」と言って眉間にシワを寄せた。

「何のこと言ってのかと思えば。お前さぁ、それ逆な」

「逆?」

「こんなこと自分で言いたくないけど俺と話しているところ見られると、お前が女どもから何か言われるからだから避けてたんだよ」

「えっ……わたしの為だったの?」

嬉しさと申し訳なさがちょうど半分半分だった。

「別に俺は誰から何言われてもダメージないけど、お前は違うだろ?」

そうだ、理斗君は誰に何を言われても平気だし、

それに───そんなことを理由にわたしを避けるような人ではない。

失礼な勘違いだったと反省する。

「ごめんね、変な勘違いして。それと、ありがとうね理斗君、わたしなんかの為に」

理斗君は背もたれに寄り掛かると不機嫌そうな顔でわたしを見る。

何か悪いことを言ったのかと心配していると理斗君の口が開いた。

「お前さ、わたしなんかとか言うなよ、自分に“なんか”て言葉付けんな」