「はい、良かったそれは。それと良かったあの話を盗み聞きしてたのがお前で。もしも綾音達だったら最悪だった」

わたしはさっき理斗君が先生に言った言葉を思い出していた。

「莉子先生に言った理斗君の言葉……」

「何だよ」

「凄く優しかったから…だから……先生に伝わって欲しかった」

理斗君は鼻で笑うと靴を履きながら話す。

「言葉ひとつで相手の気持ちが変われば簡単でいいんだけどね。あれ、俺の親戚なんだ」

「ん?莉子先生のこと?」

理斗君はうなずく。

どうりで理斗君の口調は先生に話す感じではなかった。

「それよりお前、時間ある?」

「うん、夕方までは」

「昼ごはんまだだろ?おごってやるよ、口止め料みたいなもん」

「えっ?」

まさかこんな展開になるとは思わず戸惑うわたしの肩を理斗君が叩く。

「行くぞ」

「は、はい」

 学校の前のバス停からバスに揺られ15分。

「降りる時気を付けろよ。お前鈍臭いから」

と、注意を受けて降りたそこはわたしが滅多に来ることのないおしゃれな街。

 バスを降りて歩いてすぐのカフェに入ると窓際の一番奥の席に案内された。

「ここってよく来るの?」

「たま~にかな」