「もう、探したんですよ……って聖ちゃんと一緒? 誠道さん。聖ちゃんとこんな薄暗いところでなにを」

 俺たちの前で立ち止まったミライは、なにやら邪推しはじめる。

「いろいろあったんだよ。疲れたから説明するのは後でいいか?」

「だめです。即刻説明を求めます。場合によっては未成年と無理やり性的な行為に及んだ犯罪者として」

「んなことするかよ」

「そうです。ミライさん誤解です」

「え? じゃあやっぱり二人は合意の上で、そんなまさか」

「合意の上でもねぇよ!」

「え? さっき睾丸をくれると合意しましたよね?」

「そんな合意はしてねぇよ!」

 とりあえず、俺はミライにここであったことを説明した。

「なるほど。申しわけありません。私がオークションに熱中していたばかりに」

「いや、今回は俺が不注意に路地裏に入ったのがいけないんだ」

「そうですよね。誠道さんがすべて悪くて、私はいっさい悪くないですよね」

 こいつ、即座に態度を反転させやがった。

「でも、ご安心ください、誠道さん。私たちにはこれがありますから」

 自慢げに胸を張ったミライは、手に持っていた透明な球を頭上に掲げる。

 え、なにそれ?

 ってかこいつさっき『オークションに熱中して』って言わなかった?

「これは見つめているだけで後悔を消失させてくれる、大変珍しい水晶です」

「なぁミライさん。ちなみになんだがその水晶はどこで?」

「はい。オークションで落札しました」

「いくらで?」

「400万リスズです」

「支払いは?」

「もちろん借金してきました。いやぁ、実はこれ、誠道さんが落札した二商品に次いで安い値段だったんです。もしかして、私ってオークションの天才なのでしょうか。次のオークションも絶対参加しましょうね!」

「絶対いくかぁあああ!」

 はぁ。こんなオチいらなかったのに。

 どうして一夜にして、400万リスズもの借金を抱えなければいけないのでしょうか。

「安心してください。返品は不可ですが、この水晶は間違いなく本物です。個人差はあるとおっしゃっていましたが……ま、誠道さんなら大丈夫でしょう」

「その文言が偽物の証拠なんだよぉ!」

「でもクションさんが『この水晶を買うことを推奨!』って、格好いい決め台詞まで言っていましたよ?」

「あのクションさんですらふざけてんじゃねぇか」

 どうやら俺は借金を抱える運命のもとに産まれたみたいです。

 主にミライのせいで。

 方法はどうあれ、お金を稼ごうとしてくれるジツハフくんが恋しいと思うのは間違っているのでしょうか。

「ああ、でもどうしてもっと入札しなかったんでしょう。500万リスズを超えるとどうもひよってしまって」

「今の言葉でその水晶が偽物だって確信したわ! ふざけんな!」

 見つめているだけで後悔しないんじゃなかったのかな?

「はぁ。私もまだまだ真のオークショニストには遠いですね」

「コラムニストみたいに言うなー」

 ミライはやっぱりミライだったね!