私は、父に本当に別れたことを話した。
父は「そうか…」と言いながら喜んでいるようだった。
その頃、父とは別々に住んでいた兄と兄嫁にも話をした。
兄が家を増築すると家に戻ってから
父は寂しそうだった…
父は、夕ご飯の時に晩酌をするのだが
長い時間をかけてチビチビ飲む。
だから、兄家族は夕ご飯を食べたら
すぐに部屋に行ってしまう。
私は、たまに行くだけだから
父に付き合って色々な話をしていた。
確かに、毎日付き合うのはキツイと思う。
でも、兄達は気付いてないかもしれないが
父を邪見にするような態度が
あるのではないか…と私は思っていた。
私が家にいる頃、散々兄嫁の悪い所を
父に訴えていたが、信じて貰えず…
父は定年退職して、家にいるようになって
兄嫁の意地の悪さに気付いた…
父があげた食べ物は、食べようとせず
ずっと冷蔵庫の中にあったり
でも、他人から貰った物はすぐ食べる。
兄嫁は外面は良いのだが
父と私には、意地悪だった。
父は、退職後も付き合い上手で外に出ることも多かった。
そんな中で、よく行く店の女の人と仲良くなって…
その人を家に連れて来て、一緒に住むと言い出した。
兄は驚いたが、あの家は父の物だし
承諾して、一緒に住みだした。
その人が家に来た時も、お互いに挨拶しなかったとか
色々あったけれど…
家事を別々にしたり、試行錯誤して生活をしていた。
その後、兄が困って父に相談をして来た。
競馬で、すごい借金がかさんで大変なことになってると…
増築した借金もある。それを足したら1千万以上だった。
父は考えて…家を売る決断をした。
いつも、そうだ…
兄が借金をして困ると父が何とかする。
私も何かと父に頼っていたから人の事は言えないが…
額が違う。
でも、仕方なかった…
父は家を売り、彼女と中古のマンションへ
兄は賃貸の家を借りた。
父の友達が、家を売ったお金を妹にあげないのは
おかしいと言ってくれたらしく…
私も、その時に残っていた借金を返すことにして
150万貰った。
兄は、結局…
また、借金をして
どうにもならなくなってから
兄嫁に相談したらしく…
私の所に、兄嫁が相談に来た。
その頃は、お互いに腹では何か思っていても
遊びに行ったり、表向きは仲良くしていたから…
私は以前、元夫の裁判でお世話になった
弁護士さんを紹介することにした。
私自身も、友達も債務整理でお世話になっていたから
私も兄と一緒に弁護士さんに会いに行った。
その時に、初めて兄の借金の話を本人から聞いて
驚いた…
借金先が17件もあったからだ…
弁護士さんの判断は自己破産だった。
自己破産は大変だったけど
返済や取り立てに怯えていた兄はホッとしたようだった。
結局、私も手助けをしてしまったけど…
私も色々と迷惑をかけていたから…
でも、また誰かに助けられて
兄の為になったのかどうかは分からない。
兄の借金問題が済んだ後…
次は、甥っ子が骨肉腫で入院した。
1年に及ぶ入院生活…
甥っ子は、手術はしたが切断などはなく
悪い所を取るだけで済んだ。
走ることは出来ないが
多少のハンデはあるけれど歩けるようになった。
中3だった甥っ子は、院内学級に通い
高校受験も無事、合格して退院した。
周りでも色々なことが起きている。
私の別れなんて…大した事がないように思えた。
私は、前に向かっていくと決めていた。
「あの人」に会うまで、もう少し…
忠実に生きるのみ…
親友は、どんな時も前向きで
私を引っ張ってくれる。
そんな親友は、私に…
「ゆうこが苦労した分、幸せになれるはず…次に行こう」
と言ってくれた。
親友にも、これから試練の時が来る。
でも、今の親友は何も知らないから言えない…
私の気分は次の人を探すというか…
今は友達が欲しいと思っていた。
色んな所に連れて行ってくれていた元夫が
いなくなったからかもしれない…
従弟がネットの掲示板で
彼女と知り合ったと言っていたから聞いてみた。
近所の友達を探すサイトで知り合ったと
そのサイトを教えてくれたから登録してみた。
「母子家庭で7歳の子どもがいます。
一緒に遊びに行ってくれる友達を募集しています」
と書いて登録してみた。
そうしたら、すぐ色々な人から返事が来た。
でも、その中には嫌な人もいた。
「寂しいんでしょ?」とか
明らかに悪意のある返事も多かった。
すぐ写真を要求する人…
すぐに会いたがる人…
すごいイケメンの写真をすぐ送って来る人…
質問をしても、質問の返事しか送って来ない人…
その中で、数人はメールのやり取りをする人も現れた…
この中に、3か月付き合って別れた人がいる。
この人は、本当にクズだった…
最初は良かったが
どんどんクズっぷりを表してくれた…
分かっているから出来れば付き合いたくない…
でも、この出会いと別れがあったから
いいタイミングで「あの人」と出会った…
ここも、変えられないのか…
変えてしまったら
「あの人」と出会えないかもしれない…
せっかく、ここまで来たのに
変えるわけにはいかなかった…
もう少しだから我慢するしかない…
結局、結論はそこになる。
私は、この人がクズ男だと知りながら
メールを続け…会う事にした。
9歳も下だから抵抗はあった…
ぐいぐい来られたが
私は自分の過去を黙って誰かと付き合うことは出来ない。
すべて話をした…
それでも、変わらず付き合いたいと彼は言った…
それから二男にも会わせて付き合いを始めた。
彼は、大型の中距離運転手で
休みもなかなか合わなかったので
こっちに帰って来た時は私の家に来た。
正直、3か月しか付き合わなかったし
愛情もそんなに無かった…
これからの事を知っていて
付き合うという行動は苦痛だった…
早く時が過ぎて欲しいとばかり思っていた。
元夫は、分かっていても愛情があったから
これまで頑張って来れたのかな…
彼は、いつの間にかお金が無いと言いながら
ご飯を食べに行ってもお金を出さなくなった。
彼の電話が鳴り続けるから
「電話出たら?」と言ったが
「いや、面倒くさい女だから出ない」
「どうして?」
「お金を借りたけど、返せとしつこいから」
いやいや…お前が悪いんだろ…
そのうち、私にもお金を貸して欲しい
と言って来たから断った。
1度目の人生では、好きな気持ちもあったから
将来について考えた。
彼はバツイチで子どもが一人いたが
元奥さんが引き取ったと聞いていた。
彼はまだ若い…
再婚したとしても、子どもも欲しいだろう。
でも、私は39歳…
恐らくもう子どもは出来ないかもしれない。
それを彼にも話した。
その時の彼の反応が、あまり良い反応ではなかった…
私は、どうにか別れる口実を作りたかったから
今回も同じ事を言った…
私は、どうにか3か月で別れなければ…と必死だった。
私は、別れに向かうために
少しずつ彼に冷たい態度をとった。
でも、彼は何だかんだ言いながら家にやってきた。
やっぱり、その時が来ないと別れられないのか…
私の記憶では、私が会社の飲み会に行った日に
今から来ると連絡をして来て、その日に別れた気がする。
その日を待つしかなかった…
それから、会社の取引先の人との飲み会を
同僚の人がセッティングした。
前もって分かっていたから、二男は兄嫁に頼んだ。
その頃、賃貸の家に引っ越していた兄嫁は
何かと私を誘って来ていた。
「家に泊まりにおいで」とよく言ってくれていたし
泊まって一緒に夜中までホラー映画を見たり
私に何かあると、二男を泊まらせてくれていた。
その飲み会も早くから分かっていたから
頼んでみたら快く引き受けてくれた。
その頃、兄の借金問題があったからか…
私が元夫と別れたからなのか…
兄嫁は優しくなっていた。
それから暫くして…
ついに、その日はやってきた…
二男は学校が終わってから、兄嫁が迎えに来て
連れて行ってくれていたので安心だった。
兄嫁は
「飲み会が終わったら連絡して、迎えに行くよ」
と言ってくれたが…
「いや、今日彼が来るかもしれないから明日行くよ」
と言った。
本当は来るとも言われてなかったけれど…
私の記憶では、この日なのだ…
私は飲み会でも気が気ではなかったけれど
とにかく…彼からの連絡を待つしかなかった。
私はいつも飲み会に行っても
楽しめなくなるからメールしたり
メールに返事をすることはないのだが…
その日は、メールを気にしてしまった…
同僚が「どうしたの?何かあるの?」
と気にするくらいに…
私は願った…
「今日でありますように…」
それから、酔いも回って来て
だんだんどうでもよくなって来た頃…
彼から「今から家に行くよ」とメールが来た。
「迎えに来てくれる?」
と返事をしたが
「いや、今日は行けない」
と返事が来た。
1回目の人生の時は
なんで迎えに来てくれないんだろう
と思った。
やっぱり今日だ…
ま、急いで帰らなくてもいいか…
そう思い、楽しんでから帰ることにした。
飲み会がお開きになってから
私はタクシーで帰った。
彼には、合い鍵を渡していたから
家に帰ると彼は、私を待っていた。
「別れたい」
と言って来たから
私は、待ってました…と思いながらも
「なんで?」と言った。
「やりたいことが出来たから、
もうあまり来れなくなると思うし」
「やりたいことって?」
「ドラム」
「来てほしいと誘われたから」
彼は小さい頃からドラムをやっていて
バンドを組んでいたこともあったけど
解散したらしく、入れる場所を探していた。
「そうなんだ、良かったね。
私も、このまま付き合ってもよくないと
思っていたから…いいよ」
と言った後
「でも、そのスポーツバッグは返して」と言った。
彼は、荷物をまとめていたのはいいが
勝手に、長男のスポーツバッグに詰めていたのだ…
「そのスポーツバッグは長男の物だから」
と言うと…
彼は慌てて詰めた物を出して
どうしよう?という顔をしていたので
私は、「これに入れたら」
と紙袋を出した。
マジでクズな男…
彼が紙袋に詰め替えた後
「じゃ、元気で」
「うん、そっちもね」
と言葉を交わして彼は出て行った。
私は…
これからも運転気を付けてね…と心でつぶやいた。
やっと、別れられた…
もう少し、あともう少し…
彼と別れたと親友に話すと
やっぱり親友は
「そうか…次行こう。次」
と言ってくれた。
この前向きさには、いつも助けられる…
私は、別のサイトで友達募集を出してみた。
このサイトで、私と「あの人」は出会うことは分かっていた…
1度目の人生では、前の彼の事があるから
年下は、子ども問題が発生しそうだし…
今度は年上か、同年代とメールしようと思っていた。
だから、メールが来る中でも
そういう人を選んでメールをした。
その中で、会ってみた人もいるが…
お互いに「う~ん…」って感じの人だったり
家が近くだったので、二男とよく行っていた
レンタルビデオ店に行く時に合わせて
会ってみたけど…
やっぱ、なんか違うなって人だったり…
私は「あの人」からのメールを待っていた。
しかし、なかなか「あの人」からの
メールが来ない。
本当に来るのだろうか…
ここまで、忠実に過去の人生を
やって来たつもりだ…
私は不安になった…
もし、運命が変わっていたらどうしよう…
覚えていることばかりではない。
忘れてしまっていることもあったから
ちゃんと、やって来れたかどうか…
私…いったい何年生きてるんだろう。
57+39=96
もう、96年も生きてることになるの?
いや、戻ったのは12歳だから…
57+27=84?
そんな中、前にメールをしていたけど
別れた彼と付き合うことにしたから
もうメールはしないと送った人から
しつこく電話やメールが来た。
直後も来ていたが、また…
「会ってもないのに」
「会ってから考えて欲しい」
電話もメールも無視し続けた。
友達募集するの怖くなったよ…
そんな風に落ち込んでいた頃
「あの人」から、ようやくメールが来た。
飛び上がるほど嬉しくて…
私は、すぐ様メールを返した。
「あの人」は年下だったし…どうかなと思ったけど…
「あの人」とのメールは、すごく楽しくて
会話が弾んだ。
「あの人」は離婚してすぐだった。
6歳年下だけど、良さそうな人…という印象だった。
子どもは二男と一緒の7歳の男の子で
元奥さんが引き取ったらしい。
暫くサイトを通じてメールをしていたが…
ある日、兄嫁が泊まりにおいでと言ってくれ
私と二男は兄の家に泊まった。
泊まっている間も「あの人」とメールのやり取りはしていた。
二男が春休みだったからか、日曜日の夜になって兄嫁が
「二男はまだ泊まらせようか?甥っ子や
姪っ子もいるから泊まってもいいよ。
ゆうこちゃんは、明日仕事だから送って行くよ」
と言ってくれたのだ。
私は、今日がチャンスだ…
と思い、「あの人」にメールした。
「今日の夜会えますか?」と…
「あの人」は「いいですよ」と返事をくれた。
だから、直アドを教えることにして…
「帰ったらメールします」
「待ってます」と交わした…
これまで、辛いことにも耐えて
頑張って来た。
嫌なことも二度…
何度も過去を変えるチャンスもあった。
でも、ひたすら「あの人」に
会いたいために頑張って来た。
元々、1回目の人生は
自分が選んで来た道だった…
でも、その人生を二度も繰り返さなければいけないのは
本当に苦しかった。
それが、やっと報われる…
出会いは、やっぱりタイミングだった…
私は、遅くなったけど
「今、帰りました。今から大丈夫ですか?」
とメールをした。「あの人」からも
「大丈夫です。何処に向かえばよいですか」
と返事が来たから
教えて貰っていた電話に電話をした。
その時に、初めて「あの人」の声を聞いた…
そして、家の近くまで来て貰った。
私は、待ちきれず…
着くだろうという時間には、そこで待っていた。
すると「あの人」は車でやって来た。
「こんばんは、初めまして」
やっと…会えた…
突然、過去に戻ってから27年…
長かった…
未来の記憶を持っての人生のやり直しは
思い出しても涙が出るくらい苦しかったけど、もう一度会うために頑張っただけ…
でも、やっと会えた…
やっと会えた私達だけど…
これから、まだまだ色々な事が起きる…
私は、それに耐えられるのかな…
不安になったけど、私は出来れば
57歳の私に戻って51歳のあの人に会いたい。
もしかしたら、これまでのように忠実に生きるのは難しいかもしれないけれど…
また始めてみよう…
初めて会った日
挨拶を交わした後、あの人が
「車に乗って下さい」
と言ったから、私は車に乗り込んだ。
私達は、近くのファミレスに行った。
最初の、あの人の印象は感じの良い人だった。
私達は、お互いの話を沢山した。
気が付くと午前2時…
すごく楽しかった。
私は自分でもびっくりしたけれど
1度目の人生で、メールした人と会う時
いつも、家の近くまで来て貰い…
また家の近くで降ろして貰っていた。
すぐ家を教えたくなかったから…
でもなぜか…あの人だけは
家の下まで送って貰った…
帰り際も、「じゃ、また」なんて
行ったことが無かったのに…
あの人には「じゃ、また…」と言ってしまった。
自分でも不思議だったけど、私は初めて会った日から
あの人のことが好きだったんだね…
当然…また同じことをした…
次の日、兄嫁から連絡があり
「二男が春休みの宿題をしてないから
まだ泊まらせて頑張らせるから。明後日帰すね」
と言ってくれたのだ。
でも次の日は、元々同僚とごはんを食べに行く約束をしていた…
あの人は、次の日もメールをくれた。
私は、「明後日会いませんか?」とメールをしてみた。
あの人は「会いましょう」と返事をくれた。
夕方、あの人の仕事が終わってから
迎えに来て貰った。
それから、色々な話をしながらドライブした。
仕事の話を聞いた時に、私はあの人に
「ちゃんと仕事して偉いですね」と言ったら
「それは当たり前のことですよ」と言った。
私にとっては、当たり前のことではなかったから…
それから私は、元夫のこと。離婚のことを話した。
あの人は「だから仕事のこと…納得しました」
「今までよく頑張りましたね」
と言ってくれた。
私はすごく嬉しかった…
気が付くと、すごく遠くまで行っていて
二人でびっくりした…
本当に話が尽きなくて…
こんな人は初めてだと思った。
それから…
夜、二男が寝てから会うようになった。
近場にドライブに行ったり
朝まで家の下で話したり…
それから二週間くらいして
あの人は、ようやく告白をしてくれた。
あの人は、告白したのも初めてで
今までドキドキしたことがなかった。
だから、びっくりしていると言ってくれた。
「好きです…」と
でも、告白だけして「付き合って下さい」と
言うのを忘れてたと…
次に会った時に言ってくれ
私達は付き合うことになった。
それからキスをするのも時間が掛かった。
あの人から聞いた話だと…
初めて会った日
私の電話の声を聞いた時に
すごいオバサンが来ると思っていた…
でも、私を見た時に驚いたと…
私達は、ずいぶん大人なのに
高校生のような恋をしていた…
こんなに盛り上がっていたけれど…
私達の再婚までの道のりは、本当に遠かった…
あの人の離婚の原因は、セックスレスだった。
でも、それ以外は仲が良かったそうだ。
結婚した元奥さんとは
元奥さんから告白されて付き合い始めた。
結婚も言われるがままにしたと…
離婚しようと言ったのは、あの人からだった。
あの人は、両親が離婚して
親戚の家に預けられたり
お母さんが再婚したり
寂しい幼少期を送っていた…
付き合い始めてから1か月経った頃
私は初めてあの人の家に行った。
そこで私達は初めて結ばれた…
それからは、あの人の家に行くようになったのだが…
ある日、夜中に私の携帯が鳴った。
家からだった…
二男が泣きながら
「お母さん、どこにいるの?早く帰って来て」
私は「ごめん、すぐ帰るからね」と言い
すぐ、送って貰った。
帰ったら二男が待っていた。
「ごめん、本当にごめんね」
私は、ダメな母親だ…
私達は、二男に寂しい思いをさせたことを
猛省した…
だから、今度から
私の家で会うことにした。
それから、長男家族と私達と二男で
一緒に遊園地に行ったり
平穏な日々を過ごした。
誕生日には、エルメスの時計を貰った。
私は、そんな高いプレゼントをもらったのは
初めてだったから戸惑った。
私がプレゼントを、あまり貰った事がないからということもあったのだろうけど…
あの人は、照れながら…
大人だから当たり前だと言ってくれた。
幸せだった…
でも、ちょっとしたことで
喧嘩になることもあった…
あの人は、いつも冷静に淡々と私に話をしてくる。
それにイライラして、私は嫌な言葉を
言ってしまうこともあった。
あの人は、一見感じが良さそうに見えるけど
心の奥底に、残酷な面を持っていた。
それは知っている。
私達は、これから何度も
別れたり引っ付いたりを繰り返す…
あの人は、私とは根本的に
考え方が違う。
だから、うまくいかないと思う。
別れて欲しいと何度も言っていた…
私は嫌だと…
玄関で押し問答してしまうこともあった。
最初に別れた時は、
貰った時計を返したけど
あの人は翌日、時計を玄関のノブに置いて行った。
あの人は
「後悔すると分かっているけど…別れる…」とメールしてきた。
私は
「後悔しながら生きたらいいよ」
とメールを返した。
結局、その言葉に堪えて、戻ることになった。
あの人は、私と性格が合わないと分かっているのに
好きな気持ちが勝ってしまうと葛藤していた。
あの人は、毎月子どもと会うことになっていた。
その時に、元奥さんとも会うらしく…
私は、自分にはそういうのが無いから…
何も言えなかったけれど…
正直、嫉妬することもあった。
それでも、好きだったから
再婚あるあるだと思って、我慢した…
喧嘩を繰り返しながら、1年経った頃
私達は、また喧嘩をした。
あの人は
「やっぱり私とは合わない。別れたい」と言ったが
私は、嫌だと言った。
けれど、あの人の決意は固く…
嫌な言葉を吐きまくった。
私は気が付くと、あの人をビンタしていた。
私は
「分かった」と言うしかなかった…
あの人は、帰って行った。
分かっていたけど…
この時は、本当に辛かったことを思い出して
また、辛くなった…
私達は別れた…
ひどい面もあるけど…
私は、どうしても嫌いになれなかった…
仕事に行く時に聞く音楽が自分と重なると
泣きながら仕事に行っていた。
忘れなきゃと思えば思うほど
悲しくなって…忘れられない。
心から、あの人を消すことは出来なかった…
あの人と別れる少し前に、長男が会社で上司と
喧嘩をして会社から帰ってしまい
それから会社に行かなくなった…
私はそれを、お嫁さんに聞いて…
長男の家に行ってみたが、私の話を聞こうとしない。
上司の人から、私の家に電話が掛かってきて
「辞めるのは、もったいない。
部署替えも考えているから、
一度、話に来て欲しいと伝えて下さい」
と言われた。
それを長男に言ったが、聞く耳を持たなかった。
お嫁さんが、会社の先輩に連絡をしてくれて
先輩が長男に話をしてくれ…長男は、やっと話す気になった。
上司の人が話し合いの場を設けてくれて、部署替えをして
会社に戻ることになったが…
もし、辞めてしまったら
住んでいるのは会社の社宅だし…
私は、一緒に住むしかないと考えていた。
一緒に住んだら、生活保護は貰えなくなるとして…
母子家庭の手当はどうなるのかと思って役所に聞いたら
世帯が違えば貰えると言われた。
その時に、ついでに貸付の事を聞いてみた。
車の免許を取るのに貸し付けは出来るのかと…
条件によれば貸して貰えるとのこと…
私は、あの人と別れてから、それを思い出した。
18歳になった時に、父が「お金をだしてやるから免許取りに行け」と言ってくれたけど、元夫から「危ないから止めた方がいい」と言われ、取りに行くのを断念した…
でも、免許が取れたら自分で二男を遊びに連れて行く事が出来る…
暇になったし…
あの人の事を考えない時間が欲しいな…
お金も貸付けして貰えそうだし…
挑戦してみよう…と
自動車学校に行くことにした。
夕方、自動車学校に行く為に、パートの時間を1時間減らして貰った。
自動車学校に託児所がある所を探したが
どこも託児所は早く閉まってしまう。
問い合わせをした自動車学校の人が
家に来てくれ、事情を話すと
二男は小学校3年生だし、事務所で預かってくれると言ってくれた。
それから、私の自動車学校生活が始まった。
6月1日に入校。
パートが終わったらすぐ家に帰って
送迎バスに乗って行く。
乗車するのは1時間だけと決めていた。
学科が3時間ある時は
お弁当を持って行き、二男は事務所で食べた。
宿題を持って行き
事務員さんと一緒にやっていた。
たまに、校長先生も見てくれた。
一番最初に乗車した時に
39歳で初めて自動車学校に通い始めた私に
若い先生が
「なんで今だったんですか?」と聞いた…
私は仕事柄、新聞のローカル欄をよく見ている。
ある日、いつも通り新聞をみていると
見たことがある名前を見つけた。
それは、大型トラックが正面衝突して
運転手が亡くなったという内容だった。
それは、あの人と出会う前に付き合っていた
彼の名前だったのだ…
1度目の人生では、驚いた。
でも今回は知っていた…
だから、別れたあの時に
「これからも運転気を付けてね」
と心でつぶやいたのに…
あの時に、私は知っていたけれど
彼に言うわけにはいかなかった。
彼は運転中によく電話をしていたから
よそ見してたのかな…
人の命というのは、本当に何処でどうなるか
分からない…
二男は木曜日にスイミングに行っていたので
それ以外は自動車学校に通った。
その間、お酒を飲んで
あの人に電話をしてしまったこともあったけど
あの人は電話に出なかった。
一度、二男から「どうして戦争はおこるの?」
と質問されて困った私は、
あの人にメールをしてしまった…
その時、あの人はメールを返してくれた…
でも、それ以上は何もなく時が流れた。
自動車学校では、みんなによくして貰って
若い男の子の友達もできた。
仮免許の学科も実地もすんなり受かった。
補習の負担なしのコースにしたけど
1回の補修だけで、見極めまで行った。
学科も1回で受かり、卒業試験も受かった。
私は、ちょうど2か月で卒業することが出来た…
自動車学校を卒業した日は
あの人の誕生日だった…
私は、誕生日にメールをしようと考えていた。
別れたのに、ストーカーみたいだけど
誕生日だからいいよね…
と自分にいいように考えてメールをしてみた。
そしたら、私には意味の分からない
難しい言葉の羅列の…返事が来た。
私は、戸惑った…
ん?どういう意味?
分からない…
思い切って電話をしてみた。
すると、あの人は電話に出た。
あの人は、私から電話があるんじゃないかと
思っていたと…
結局、メールの意味は分からなかったけど…
私は、自動車学校に通ったこと
今日卒業して、明日学科を受けに行くことを話した。
思い切って、もう一度会いたいと言ってみた。
そしたら、あの人は明日会いに来てくれると言った。
私は翌日、学科の試験を受けに行った。
受かるかどうか不安だったけど…
結果は…合格。
40歳にして、やっと免許が取れた。
その翌日、あの人は家に来た。
会うのは3か月ぶりだった…
嬉しくて…
もう一度やり直したいと
言ってみたけど…
あの人は付き合うのは無理だと…
でも、会いには来てくれた。
その頃、あの人を頼っている女の娘がいて…
その人の事が好きなのかと思ったけど
そんな感じでもない…
その女の娘は、離婚に悩んでいた。
同じ、趣味の集まりの中の人。
あの人は、人に頼られることが多い。
それで勘違いをされて、好きになられることも…
8月、色々なイベントがある中で
あの人は、その女の娘とイベントに行くと言った。
だから私は…
自動車学校で出来た若い男の子の友達から
花火を見に行こうと誘われていたので
それに行くと言った。
そして、私は男の子と二人で花火大会に行った。
彼とは友達だったし…
彼女になりそうな人がいるみたいだったから…
しかも、長男より年下の男とどうにかなる気はなかった。
でも、それで喧嘩になったり…
あの人は、仕事で独立することになったり…
あの娘が、旦那さんと別居して家を借りることになったり…
その娘が、明らか…あの人のこと好きなんでしょ、みたいな態度を取っていたり…
問題だらけだったけど…
月日が流れ、私達はまた付き合うことになった。
なんでこんなに長く掛かったのか…
1度目の人生も今回も分からなかった…
それから…
ある日、長男の嫁から連絡があった。
長男が浮気していると…
どうも、浮気相手が長男の車に
痕跡を残していたそうだ。
ついこの間、マンション買うかもしれないと言っていたのに…
長男に電話をしてみたが電話に出ない…
長男は離婚したいと言っていると…
お嫁さんは、相手の女とも話をしたと言う。
私は、長男に何度も電話をしたが…
電話に出なかった。
お嫁さんの話によると
「母さんは、嫁さんの味方だから…」と言っていたらしい。
それから、お嫁さんは実家に帰った。
でも、長男の気持ちは変わらず‥‥
「自分には結婚は向いていない」と…
それをお嫁さんは受け入れてくれて
二人は、離婚することになってしまった。
長男は家を出てマンションを借りた。
お嫁さんが、社宅を片付けに実家から帰って来た時に
私も、手伝いに行った。
その夜、子ども達が寝てから
二人でコンビニにお酒を買いに行って
二人で飲んだ…
お嫁さんとは、本当に仲が良くて…
長男抜きで、旅行に行ったこともある。
私とあの人の事も
ずっと話を聞いて貰っていた。
長男が悪い…
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった…
それでも、お嫁さんは
「私とお義母さんの仲は変わりません。
これからも仲良くしましょうね」と言ってくれた。
そうは言っても、実家は遠い…
寂しかった…
いくら、分かっていた出来事とはいえ
長男の気持ちを変えることは
私にはできなかった…
長男は離婚して浮気相手と住み始めた…
結婚する気はないと断言していたけど…
ま、その通り。
その女とは腐れ縁みたいだったが終わる。
それから
元夫の知り合いから連絡があって
元夫が出所したと聞いた。
「元夫が長男と連絡を取りたいから
電話番号を教えて欲しいと言っているけど
どうする?」と…
私は、長男に連絡した。
長男は、あっさり「教えていいよ」と言ったので
知り合いに教えた。
その後、長男に聞くと
お父さんから電話があって、会ったと…
「元気そうだったよ。自分が離婚したことを話した」
「親子だね…」と話をしたと言っていた。
私の方は…
あの人と半同棲になっていた。
あの人が仕事を終えて
家で事務仕事をしてから家に来て
ご飯を食べて寝て、朝はうちから出発する。
荷物も、どんどん増えて行った…
私達は、大人だけど…
結婚のきっかけが無く…
なかなか結婚できずにいた。
子どもが出来たらみたいに思っていたけど
私は、完全に高齢出産…
リスクが大きい。
実際、お互いに子どもはいるけど
出来にくい体質となっていた…
ある日、新聞を見たら
また、見たような名前…
元夫だった。
知り合いから連絡があった。
出所して、あのママの所に戻っていたけど
若い女にはまったのか…
そこで捕まったと…
私は、別れていて本当に良かったと思った。
それから暫くして
今度は新聞に、あのママが出ていた。
他の男の人と一緒に捕まったようだった。
どうなっているのか…
私にはどうでもよかったけど…
子どもがどうなるのか気になった。
後日…
知り合いから聞いたのだけれど…
元夫とママの子どもは
ママの元旦那さんが預かっていると…
私には、考えられなかった。
私が、二人の子どもを預かるのと
同じことだよね…
私には、到底無理だ…
それから、月日は流れ…
私とあの人は半同棲のままだったが…
あの人が、中古だけど車を買ってくれた。
独立した時に、愛車を売って
仕事のトラックだけになっていたのもあるけど…
私は、免許を取ってから
乗らなかったら、ペーパードライバーになると思い
定期的にレンタカーを借りて運転していた。
それで、私名義で車を買い
生活保護も、辞退した。
それから車で毎週末、親友と一緒に出掛けたり
楽しい日々を送っていた。
あの人は、たまに不安定になり喧嘩することもあったが、
前よりは回数も減っていた…
二男が中学生になり、テストの点を見て成績がヤバいと知った。
それで塾に行かせようという話になり
あの人が塾代も負担してくれることになった。
それまでも、食費とかを毎月貰っていたけど…
ここまでお金を入れるなら
広い家に引っ越した方が良いのではないか
という話が持ち上がった…
私は、父に付き合っている人がいると話をした。
そしたら会ってみたいと…
あの人は緊張すると言いながら会ってくれると…
父と後妻さんと私とあの人と二男で食事に行ったのだが
父は、すごく嬉しそうにしていた。
父は後で、「再婚しないのか?」と言ったけど、
私は「まだ分からない」と答えた。
父は「早く再婚した方がいいと思うけど…」
と、心配そうにしていた…
そんな時…
また新聞に元夫が載っていた。
今度は、職質されて捕まったと載っていた。
しかも、元夫はすごく近くに住んでいたのだ…
本当に懲りない人…
いったい何度目の逮捕なんだか…
私といる間だけでも、確か…5回?
その前にもあるみたいだし…全部で8回?
ある意味、可哀想な人…
覚せい剤って本当に怖い
人間やめますか?それとも覚せい剤やめますか?
ってあったけど…本当に人間、終わってる…
覚せい剤は、本当に人間をダメにする物だと
つくづく思った…
結局、何回人生をやり直そうが、元夫は変わらない…
元夫が私に覚醒剤をしなかったことは、改めて良かったと思う。