俺は高校入学式で恋に落ちた。

そいつは、女子と見間違うような綺麗な顔をしていた。

だから、男とは気づかずに、俺は告白してしまった。



「好きです!俺と付き合ってください!」

「は?」

入学して二日目に告白した。

相手はなにいってんだ?みたいな顔をしていた。

「昨日、入学式で見かけて、一目惚れしました」

「俺に?」

…ん?俺?

俺は顔をあげた。

「え?まさか、男?」

「そうだけど、お前、俺と付き合いたいの?」

う、嘘だろ?

女と間違って、男に告白するなんて…


「どうなの?」

「えっと…」

まさか、女と間違って告白したなんて言えない。

「からかってるだけなら、帰る」

「ま、待って!」

まさか、男の顔にこんなに惚れ込むとは思わなかった。

「からかってなんかいない。ほんとに好きなんだ!お前の顔が!」

「俺の、顔?」

ピタツと足を止めて、振り返る。

「あはは!お前、面白いな」

腹を抱えて笑い始めた。

「いいよ。付き合っても」

「え?いいの?」

俺は、拍子抜けした。

「ただし、条件がある」

「条件?」

その条件を聞いて、俺は愕然とした。

学校が終わると、こいつ、羽山涼に家に連れてこられた。

「俺、家事とかできないから代わりにやってくれたら付き合ってやる」

そう羽山が出した条件は、家事全般をこなしてくれるなら付き合うと言うものだった。

「お前、家事は得意か?」

「まぁそれなりには…」

いつも忙しい両親に代わり、下の兄弟たちの面倒をみたり、家のことを任されていたので、家事はお手のものだった。

高校は、地元からの離れた高校を受験したので、今は中学二年の妹が代わりをしてくれている。

「それに、住むところもまだ決まってないんだろ?どうせなら、一緒に住んでもいいよ」

それはもう同居だ。

いろいろ通り越している。

だが、住まいが決まってないのも事実だった。

「わかった。やるよ」

「決まりだな。じゃあ、付き合おう」

こうして、俺と羽山の同居生活が始まった。

結論から言うと、羽山はめちゃくちゃだった。


朝は寝起きが悪い。

好き嫌いは多い。

服はそこらへんに脱ぎ散らかす。

誰かに家事を頼むのも頷けた。

「七瀬、俺これ食えないんだけど」

葉山がにんじんをフォークでどかした。

「好き嫌いするな!だからそんな顔色悪いんだよ!」

今日も羽山の顔は青白かった。

入学の時は、透き通るように綺麗な色白の顔をしていたのに、一体どうしたと言うのだろう。

「最近、寝れてないんだよ。好き嫌いは関係ない」

「は?お前、寝れてないの?」

「宿題が多いんだ。普通科のお前よりは2倍くらいの量だよ」