それから私はあることを始めた
容姿が変わったことにばれてしまう為、染粉で髪を見すぼらしくして、肌も同様なものを塗った
ヴェールもいつものように被った
習慣づいてしまったものだ
けれど、このヴェールは彼が私にくれた初めての贈り物
思いれのある品だ、これがある限り私は以前の私でいられるのだ
民と両家の両親を欺くために、醜い姫を演じた
彼と私だけの秘密
この時だけ私の専属の侍女がいなくてよかったと思った
そして私と彼は何度も、彼の両親に認められるために
言葉を交わし続けたが王は聞く耳を持たなかった
父はこの件を関わりたくないようで
好きにしろ、とのことだった
私はふと考えを巡らせ、彼の両親を認めさせるのではなくて、民と交流しようと思った
民を通して、この国の現状を見てみたいという思いもあった
彼が愛している国を
そして私は民と交流を深めようと、彼と一緒に挨拶をしたり、言葉を交わした
最初は不審がられ、罵声や物を投げてくる人もいた
彼は庇おうとしたけれど、私は拒否をした
体を張ってやることに意味があるから、わざと避けずに受けた
あたりどころによっては血は流れたが、私は気にせずに歩く
その行動に民達は動揺した
そして物を投げる手を止め、誰もが彼女が堂々と歩く姿を見惚れていた
いつものように民と交流をし、歩いていると小さな子供が彼女の服を掴んだ
見るからに、体は痩せ細っており衰弱しているようだ 頬には殴られたような跡があった
子供と目線を合わせるように、彼女は屈む
ゆっくり微笑むと、子供も警戒心が少し薄れたようで、ゆっくりと言葉を発した
『貴女をずっと見てました
何故、ずっと笑っていられるのですか?
物を投げられても、言葉を拒否されても』
初めて言葉を投げかけてくれた人がいて、嬉しかった
子供は、自分がされてどうにもならなかったことを
自らの手で覆している姫に興味を持ったようだった
『私はね、ずっと全てを諦めていたの
望むことはきっと駄目なことだ
そうやって自分の首を絞めてた
けれどそれは駄目なことだって気づいた
自分の存在を否定してるってことに』
子供はわからないようで、困惑した表情をしていた
『今はわからないと思う
けれどいつか、あなたも気づいて欲しい
そしてわかって欲しいの
一人一人、生きてることに価値があるって
命あるものに全て意味がある
容姿だけが全てじゃないってことに』
その言葉が、周りにいた人々の心に届き
歓喜させたことを彼女は知らない
ゆっくりと子供の頭を撫でようとしたが、子供は体を震わせた
やっぱり私の噂、迷信を信じているのだろう
"醜い姫に触られると、その身が穢れる"
容姿が変わった事がばれないように
ヴェールだけではなく両腕を覆う手袋をしたが、それも却って刺激してしまったのかも知れない
『ごめんね、あなたの頭を撫でようと思ったの
頭を撫でられるとね、心が落ち着くって聞いたから
…びっくりさせちゃったよね』
ゆっくりと行き場をなくした手を、下ろそうとすると子供は私の手を取った
『…びっくりしたけど、お姫様が悪い人
じゃないってことだけはわかった
お姫様はとても優しい
心があったかくなった』
子供は満面の笑みで、私を見つめる
真っ直ぐな心に触れて、私は泣きそうになった
子供の心はこんなに純粋で、綺麗で
私はそんな心に触れていいものかと、少し戸惑った
『ありがとう、私の言葉に耳を傾けてくれて
あなたの心に触れさせてくれて』
ゆっくりと子供を慈しむように、抱きしめると子供も抱きしめ返してくれた
その光景が民の心を変え、それから彼女に対して何も言わなくなった
後日、姫が民の目の前に現れると、民達は姫を取り囲んだ
そして、謝罪と感謝の言葉、品々を姫に与えた
『本当にごめんなさい
私はあなたを容姿だけで判別していた』
『僕も』
『私も』
姫はゆっくり首を振り、民の手を優しく包んだ
『誰も、初対面の相手が急に現れると
拒絶するものです
だけど、私はあなた達の心に触れたかった
彼の、王子の愛する国の一員である方々に』
その言葉に感謝し、遠くで見守っていた王子に向かって民は懇願する
『王子様、この姫様を幸せにしてやってよ
こんないい子、滅多にいないんだから!』
『そうだよ、私のお嫁さんに欲しいくらいだ!』
こんな祝福されてることに慣れていない姫は、民からの賞賛の声に、顔が赤くなるのを抑えきれなかった
いつの間にか、隣にいた王子が姫の肩を自分に引き寄せ
見せつけるかのように、姫の耳元で答える
『ええ、必ず
姫は私が幸せにしますよ
私が心を奪われた人なのですから』
公衆の面前で、このように口説くようなセリフを言われ
さらに赤面するが、様々な嬉しさが混じり、姫は涙を流した
そしてその涙を見た人々は、彼女を醜い姫ではなく、民を心から慈しむ女神と呼んだ
容姿が変わったことにばれてしまう為、染粉で髪を見すぼらしくして、肌も同様なものを塗った
ヴェールもいつものように被った
習慣づいてしまったものだ
けれど、このヴェールは彼が私にくれた初めての贈り物
思いれのある品だ、これがある限り私は以前の私でいられるのだ
民と両家の両親を欺くために、醜い姫を演じた
彼と私だけの秘密
この時だけ私の専属の侍女がいなくてよかったと思った
そして私と彼は何度も、彼の両親に認められるために
言葉を交わし続けたが王は聞く耳を持たなかった
父はこの件を関わりたくないようで
好きにしろ、とのことだった
私はふと考えを巡らせ、彼の両親を認めさせるのではなくて、民と交流しようと思った
民を通して、この国の現状を見てみたいという思いもあった
彼が愛している国を
そして私は民と交流を深めようと、彼と一緒に挨拶をしたり、言葉を交わした
最初は不審がられ、罵声や物を投げてくる人もいた
彼は庇おうとしたけれど、私は拒否をした
体を張ってやることに意味があるから、わざと避けずに受けた
あたりどころによっては血は流れたが、私は気にせずに歩く
その行動に民達は動揺した
そして物を投げる手を止め、誰もが彼女が堂々と歩く姿を見惚れていた
いつものように民と交流をし、歩いていると小さな子供が彼女の服を掴んだ
見るからに、体は痩せ細っており衰弱しているようだ 頬には殴られたような跡があった
子供と目線を合わせるように、彼女は屈む
ゆっくり微笑むと、子供も警戒心が少し薄れたようで、ゆっくりと言葉を発した
『貴女をずっと見てました
何故、ずっと笑っていられるのですか?
物を投げられても、言葉を拒否されても』
初めて言葉を投げかけてくれた人がいて、嬉しかった
子供は、自分がされてどうにもならなかったことを
自らの手で覆している姫に興味を持ったようだった
『私はね、ずっと全てを諦めていたの
望むことはきっと駄目なことだ
そうやって自分の首を絞めてた
けれどそれは駄目なことだって気づいた
自分の存在を否定してるってことに』
子供はわからないようで、困惑した表情をしていた
『今はわからないと思う
けれどいつか、あなたも気づいて欲しい
そしてわかって欲しいの
一人一人、生きてることに価値があるって
命あるものに全て意味がある
容姿だけが全てじゃないってことに』
その言葉が、周りにいた人々の心に届き
歓喜させたことを彼女は知らない
ゆっくりと子供の頭を撫でようとしたが、子供は体を震わせた
やっぱり私の噂、迷信を信じているのだろう
"醜い姫に触られると、その身が穢れる"
容姿が変わった事がばれないように
ヴェールだけではなく両腕を覆う手袋をしたが、それも却って刺激してしまったのかも知れない
『ごめんね、あなたの頭を撫でようと思ったの
頭を撫でられるとね、心が落ち着くって聞いたから
…びっくりさせちゃったよね』
ゆっくりと行き場をなくした手を、下ろそうとすると子供は私の手を取った
『…びっくりしたけど、お姫様が悪い人
じゃないってことだけはわかった
お姫様はとても優しい
心があったかくなった』
子供は満面の笑みで、私を見つめる
真っ直ぐな心に触れて、私は泣きそうになった
子供の心はこんなに純粋で、綺麗で
私はそんな心に触れていいものかと、少し戸惑った
『ありがとう、私の言葉に耳を傾けてくれて
あなたの心に触れさせてくれて』
ゆっくりと子供を慈しむように、抱きしめると子供も抱きしめ返してくれた
その光景が民の心を変え、それから彼女に対して何も言わなくなった
後日、姫が民の目の前に現れると、民達は姫を取り囲んだ
そして、謝罪と感謝の言葉、品々を姫に与えた
『本当にごめんなさい
私はあなたを容姿だけで判別していた』
『僕も』
『私も』
姫はゆっくり首を振り、民の手を優しく包んだ
『誰も、初対面の相手が急に現れると
拒絶するものです
だけど、私はあなた達の心に触れたかった
彼の、王子の愛する国の一員である方々に』
その言葉に感謝し、遠くで見守っていた王子に向かって民は懇願する
『王子様、この姫様を幸せにしてやってよ
こんないい子、滅多にいないんだから!』
『そうだよ、私のお嫁さんに欲しいくらいだ!』
こんな祝福されてることに慣れていない姫は、民からの賞賛の声に、顔が赤くなるのを抑えきれなかった
いつの間にか、隣にいた王子が姫の肩を自分に引き寄せ
見せつけるかのように、姫の耳元で答える
『ええ、必ず
姫は私が幸せにしますよ
私が心を奪われた人なのですから』
公衆の面前で、このように口説くようなセリフを言われ
さらに赤面するが、様々な嬉しさが混じり、姫は涙を流した
そしてその涙を見た人々は、彼女を醜い姫ではなく、民を心から慈しむ女神と呼んだ