聞き間違えでなければ、百野は今、おかしなことを言った。百野と俺でバッテリーを組んで、そのバッテリーで勝負をするということを口にしたのだ。
「いや、意味わかんないんだけど……」
思ったことが素直に口をついて出た。だってそうだろう。バッテリーで戦う野球なんて、聞いたことがない。
困惑する俺に構わず、目の前の元ライバルは続ける。
「新入生でどのくらいピッチャー経験者が入ってくるのかわからないけど、監督の話だと例年は3人から4人が登板してひとり2イニングか3イニングを投げるそうだ。君はその複数イニングを無失点に抑えるんだ。僕は、先輩たちが君から点を取れるようにリードする」
「お前、先輩らの味方をするのか!? そんなことしたら自分の評価に」
「響かないよ。監督には君が登板するときだけそうすることを伝えるから」
言葉を失った。
たしかに、百野ほどの逸材が申し出れば、監督も渋々納得するのかもしれない。だけどやっぱりわからない。
「なんで、そんなことをする必要がある?」