「おはよう」
 僕は、いつも通りの挨拶をした。
 いつも通り、返事はない。
 でも、いつもとは少し違う。今日は、火曜日。あの時から、ちょうど一週間たった。
 実は、あの後、僕は津乗さんと毎週火曜日に、あの例の公園で、私夏について語り合う約束をしていたのだ。だから、僕は今日の日を楽しみにしていたのだ。変哲もないいつもの日常に、少しだけ彩りを与えてくれるのが火曜日だから。といっても、あれからまだ一週間しかたっていないのだ。まだ少し怖い気持ちはある。
 と言うのも、少し事情がある。
 まぁとにかく彼女が話してくれるだけでいい。それ以上は何も求めてはいけない。だって、彼女だって、ただ泣いていただけとは言え、他人と仲良くするには抵抗はあるだろう。
 僕のこの薄っぺらい、名前や性格だけで決めつけた、彼女に対する感情も、いつかは消え失せてくれるはずだ。
__ところで、僕がこの公園を好きな理由はもう一つある。それは海があると言うことだ。人気の少ない海なら、誰にも見つかることなく好きなことができる。小学校低学年で小説が大好きだったあの頃からこの公園にはお世話になっていた。だって、休み時間本なんか読んでいたら、いじめの対象になるかもしれないし、友達もできないからだ。まぁ、普通に友達はごくごく少ない方だったが…。
 とにかく、その友達が少ない僕は、本が友達のようなものだった。友達で表すなら、私夏は親友のようなものだ。その親友のことを好いてくれる人がいると言う事はすごく誇らしかった。______
 そんなことを考えていたら、チャイムが鳴った。やっば、と思った頃には、もう遅い。授業はもう既に終わっている。こんなにくだらないことを思い返すようにして考えていただけで、考えただけでアホだと思うし、自業自得だと思う。でもでも、今日は公園の約束があるのだ。それなのに、授業を聞いていない。復習する時間もない。範囲もわからない。本当にどうしよう。これはまずいぞ。
 その日、僕は諦めて担任に怒られ…いや、範囲を聞きに行ったのだった。