ミア・アネリアという名前に心を惹かれて、しまった私は元のプリンセス・ゼレーナという名前を捨てると、決心した。
 昔から、元の名前を愛せない者は不幸が訪れると言われていたが、もう私の心は止めれない。

「お願いします! ミア・アネリアと名前を変えてください」

 この問いにプランスは、仲睦まじい微笑みを見せて、くれた。この微笑みが、これからも続きますようにと、プランスの前に貼り付けてある、窓に向けて願った。
 
 今日も空が綺麗だ。
 夕日はこの家からは見えないけれど、夕日で茜色に輝く空なら見える。まるで、魔力で焼かれたようだ。

「ふふ、分かった、ミア・アネリアに変える」

 そう言って指先にプランスは魔力を込めた。

 私は光って輝くプランスの魔力が眩しく、瞼を閉じた。けれど、そんなけじゃあ光は治らず、さらに光が強くなった。
 多分プランスの指が頭の上にあるからだと思う。

 このしなやかな、指使いが魔力のおかげで目で見ているようにわかる。もしかしたら、職人魔力の製造魔力の持ち主なのかもしない。
 だとしたら、王国では上位に位置する一族だ。
 私はお会いしたことがない。

「よし、ミア完了だ、これでミアは王国の人間じゃない、王妃じゃないだ」

 プランスは私の名前を変えてくれたらしい。ミア・アネリアに。

 これで旦那様、私は貴方の物じゃありません。なので自由にしてください。もう私を追うような真似はしないでください。
 貴方の言う通り、この五年間貴方に尽くしました。もう私も限界です。

 そう唱えていると、プランスがまた料理を再開した。プランスの料理は毎回美味しい。

「プランス、貴方はもしかして製造魔力の持ち主なんですか?」

「うん。でも僕は王国の人々じゃない」

 プランスのこの言葉が奇妙にも、引っかかった。

 理由はただ一つ。それは、製造魔力を扱える者はこの世に一族しかいない。しかも、その一族が年々突如として消えている。旦那様はこの事件を他国からの侵略と見込んだ。
 それで、他国とめ面会して、会議を始めたが、他国の陛下は知らないの一点張りだった。あの時の記憶が今でも鮮明に記憶されている。

「でも、製造魔力の持つ人は一族だけです」

 考えることもしなずに、ただプランスに訊いた。プランスは微笑みながら振り返り、銀のレードルを持ちながら微笑む顔で、

「そうだけど、僕は違う」

 言った。

 あまりに冷めた言い方だったから、これ以上質問はしないほうがいいと私は思い、すぐ後ろのテーブルに座った。
 
 机に頬杖をつき、プランスの様子を見て、嗜む少量のエールは美味しかった。

 いつも、プランスはエールを作ってくれる。
 どこでどうやって作ってるかは分からないけど、手作りで作ってるとプランスは言っていた。

「カレーの匂い美味しそう」

 匂いが漂ってきたからそう言った。

「今スパイスとか入れたからね。それに、カレーのルウも昨日作ってたから、今から入れるね」

 ここの家は木造りで、やっぱり暖かくて、匂いとかも漂ってきて、まるでモデルハウスだった。
 プランスが設計したらしいけど、本当に感動レベルによくできた家だ。

「カレーのルウってどうやって作るの?」

 思わず気になってしまったから口が動いて、口に出してしまった。

 はあ、とため息を吐くほどのイケメンと美しい瞳のお方が目の前に居る。そう思うだけで、今までの人生がくだらなくなって、しまう。

「内緒、まあ魔力で作ってるからどうって言われても分からない」

 プランスは瓶を手に取るとそのまま、鍋に入れた。何を作っているのか気になってしまったけど、美味しければなんでもいい。

「やっぱり、プランスの魔力は便利だね」

 いつのまにか、私は目で彼を追っていて、目が離せないように、ずっと眺めていた。
 なぜか目が離せず、チラッと見える彼の瞳が美しくてたまらない。こんな思い、旦那様といた時は感じれなかった。

 多分、旦那様といた時はずっと縛られていたからだと思う。寝る時間まで決められていて、トイレをしたくてもできない。

 それがルールだったからだ。

「当たり前だ」

 でも、今じゃあそんなルールもなくて、プランスは『どうぞご自由に』と言ってくれた。
 
 あの一言で私は救われた。地獄にポツンと取り残された私を・・・・・・・。

「ミアには魔力があるのか?」

 彼の唐突的な言葉に、少し考えたけど私は答えた。

「あるよ」

「どんな?」

「解読的な魔力。ダンジョン攻略の際私結構役に立つんだからね」

 私の魔力"解読„あまり知られていない魔力だけど、旦那様とある伝説の書籍を読む時に私はこの魔力を、最大限に発揮した。
 あの書籍は神の伝言らしく、神の字で書かれているためどんな人にも読むことができなかった。
 けれど、私の魔力を使ったら容易に全て読み上げることができた。私に読めない文字などこの世には存在しなし、鑑定魔力もできる。
 一時期は鑑定魔力で、ある高価な宝石を見つけたりしていた。旦那様と・・・・・・・・。

「そうか、じゃああの文字も読めるかも」