スマホが手元に帰ってきたので、春香に連絡を入れた。

「もしもし、真白?大丈夫?」

春香の心配そうな声が聞こえた。

「うん。そっちは?叔母さん大丈夫?」

出てくる時にかなり取り乱していたから心配だった。

「今は落ち着いてるよ。でも、しばらくは帰ってこない方がいいと思う」

相当怒っているようだ。

「お父さんから聞いたんだけど、桜咲っていう人の家でお世話になるんでしょ?意地悪な人とかいない?」

真白は桜咲家の家にはまだ行けていなかった。

「実は、まだ桜咲って言う人には会えてないの。これから挨拶に行きたいんだけど」

「そうなんだ。何かあったら連絡してね」

「ありがとう。春香」

そう言って、真白は電話をきった。

「連絡できた?」

「うん。大丈夫」

神崎が部屋に入ってきた。

「神崎くんは、桜咲って言う家知ってる?私、その人たちにお世話になるんでしょ?」

「知ってるよ。その家の一人息子が、うちの学校にいるから、今度紹介するよ」

どうやら、知り合いのようだ。

「それと、退魔師たちがいるから学校に行ったら会わせるね。みんな明日自由人で、いつもどこにいるかわからないけど」

退魔師と言う言葉は聞き慣れなかった。

「何?退魔師って」

「退魔師は、人には見えない物を退治するんだ。主に人に害をなすもの、悪霊とか邪気を吸ったあやかしの邪気を祓うこともする」

「そ、そうなんだ」

いまいち理解できなかったが、特殊な職業みたいなものだろうと真白は思った。

「せっかくだから、屋敷の中を回ってみたら?俺も、この屋敷のことは詳しく知らないから、一緒に回るよ。いいよね?琥珀(こはく)

神崎が狐に向かって言った。

「好きにしろ」

「いいって、行こう」

真白と要は、屋敷の散策を始めた。

「あの狐の名前って…」

「琥珀って言うんだ。目の色が琥珀色だから琥珀らしいよ」

長い廊下を歩く。

「この先に何があるの?」

「彩葉が使っていた白装束や装飾品が置いてあるそうだよ。俺は入ったことがないから実際に見たことはないんだ」

さらに進んでいくと、赤い襖が見えた。

「ここかな」

要が襖を開けた。

部屋の中には綺麗な白装束が壁にかけられていた。

「綺麗…」

真白は思わず見惚れた。

(あれ?これって…)

夢の中で彩葉が着ていたものと同じだった。

「俺が夢で見たのと同じだ。これをきて彩葉は神楽を舞うはずだった。でも、何者かによって屋敷が襲われたんだ」

「え?襲われた?」

「屋敷が襲われた日、式典が行われる前日だった。彩葉はそこで、神楽を舞うはずだった。その年に生まれたばかりの娘と一緒に身を清めていたんだ」