(じゃあ、ここって私の親戚の家ってこと?)

自分の親戚がすごい家系の人だなんて真白は思わなかった。

庭にある大きな木に目を向けた。

その時、急なめまいに襲われた。

[なに…これ…)

真白はそのまま気を失った。



綺麗な桜が咲いていた。

手を広げると、桜の花びらが風に乗ってひらひら舞い、手のひらに落ちてくる。

「彩葉様」

優しく呼ぶ声に振り返る。

「白夜」

その名前を呼ぶたびに、胸が熱くなった。

「もう夜更けですよ。眠れないのですか?」

「うん。目が覚めちゃって…」

「では、何か話でもしますか?」

「子供じゃないんだから」

ふっと笑った。

「それもそうですね」

白夜も笑った。

そこで真白は目を覚ました。

「起きたか」

きちんと布団の中で寝ていた。

「もしかして、運んでくれたの?」

壁に寄りかかっている狐に声をかけた。

「少し待ったが、起きなかったからな。疲れていたのか」

わからない。

桜の木を見た途端、倒れてしまった。

「そうかも」

今まで見たことがない夢だった。

真白は不思議な感覚になった。

「今日はもう寝ろ」



次に目を覚した時には朝になっていた。

「荷物、ぜんぶ置いてきたんだった」

何も持たずにここにきてしまった。

幸い、今日は学校は休みだ。

その時、インターフォンが鳴った。

ドアを開けると、要が立っていた。

「おはよう。よく眠れた?」

(本当にきた…)

「朝ごはんまだでしょ?家で作ってきたのあるから、食べて」

手には風呂敷を持っている。

「ありがとう」

神崎が持ってきた弁当を真白は食べた。

食べている真白を要は、頬杖をついて見守っていた。

「ご馳走様でした」

食べ終わって、手を合わせた。

あんなに豪華な朝食は初めて食べた真白はそう思った。

「口にあった?」

「うん。すごくおいしかった。ありがとう」

真白がそう言うと要が嬉しそうに笑った。

「よかった」

真白は立ち上がって言った。

「家に荷物置いたままだったから、取りに帰らないと」

「あぁ、そうだったね。でも大丈夫」

要が真白を奥の部屋に連れて行った。

「一応、真白の荷物は持ってきてもらったから」

学校で使うカバンや教科書、衣服があった。

「誰が持ってきてくれたの?」

「そのうちわかるよ。あとこれ」

要が手に持っていたのは、真白のスマホだった。

「これ、私のスマホ…」

連絡手段としてしか使っていなかったが、あったほうがいい。

「今日は荷物を片付けるといいよ。この部屋は、寝室として使うといい」

部屋にはたんす、姿見などが置かれていた。

「ここ、使っていいの?」

「なにいってるの?ここは真白の家なんだから、真白の好きに使っていいんだよ」