「彩葉様!」

彩葉と華がいる部屋に向かった白夜と夜叉は、未影に出くわした。

「こいつは俺が相手をする!白夜は彩葉様の元にむかえ!」

未影は手強く、彩葉たちがいる部屋に入られてしまった。

「白夜…!」

白夜が倒れている。

どうやら、やられてしまったようだ。

邪気が華のところに群がっていた。

「やめろ!」

夜叉が華のところに向かって、油断してしまった。

後ろに未影がいることに気づかなかった。

斬られそうになった夜叉を彩葉が庇った。

「彩葉様!」

夜叉は膝から崩れ落ちた。

「夜叉、華をお願いね…」

そういって彩葉は事切れた。

近くにあった刀で、夜叉は、未影を刺した。

「小僧、この赤ん坊を連れて屋敷を出るぞ」

琥珀が現れた。

「早くしろ」

夜叉と華は、琥珀に連れられ、屋敷をでた。


霧人は、寿人の家を訪れていた。

「兄上、あの二人を匿っていたのはあなただったのですね」

「霧人、お前はどれだけの人を殺したら気が済むのだ」

「彩葉たちのことですか?それなら私ではありません。未影に殺させました」

「お前が術で操っているのだろう。従者にそんなことをさせるとは…お前の行動は目に余る。もう許すことはできん」


霧人の背中を弓矢が突き刺した。

霧人はしばらくして、こときれた。

「これで今まで殺されたものたちの未練も晴れよう。清華、お前の双子の妹も、あの子たちも」


夜叉が連れてこられたのは山奥の民家だった。

「おい、大丈夫か」

「あなたは…」

「私の名は飛影だ」

夜叉は近くに華がいないことに気づいた。

「華は⁈」

「心配するな。お前が連れていた赤ん坊はここにいる」

隣を見ると、華がすやすや眠っていた。

それから五年後。

華は元気に育った。

一方、夜叉にかけられた呪いは、刻々と夜叉の体を蝕んでいた。

「華を預かっていただけませんか?」


夜叉は頭を下げて飛影に頼んだ。

「私はもう長くありません」

「わかった。華は私が責任を持って育てよう」

池で遊んでいる華を見つめた。

後からこの家にやってきた洸刃(こうは)とも仲良くなった。


その日の夜。

「夜叉様。明日から遠くにお仕事にいくの?」

隣で寝ている華が言った。

「そうだな。しばらく戻れないから、飛影さんの言うことを聞いて、、洸刃とも仲良くするんだよ」

「うん。わかった」


そして別れの時がやってきた。

「華を、よろしくお願いします」

「あぁ、わかった」

華の頭に手をのせた。

「華、お前にこれをやろう」

夜叉は、首にかけていた桜の首飾りを華にはわたした。

「でも、これは大切なものだって」

以前、華がこの首飾りをほしいとねだったことがあった。

「これを、預かっていてくれないか?」

「早く帰ってきてね」

その言葉に夜叉は胸が苦しくなった。

もう華に会うことはない。

夜叉は、華を抱きしめた。

「あぁ、わかった」

そう言って夜叉は華のもとを去った。

呼吸が苦しくなり、一本の桜の木に手をついた。

夜叉は、地面に横たわり、右腕を見つめた。

『これ、あげる』

それは華が作ってくれた、組紐だった。

『ありがとう。華』

頭を撫でてやると、嬉しそうに笑う華が浮かんだ。

「あの子が大人になるのを、見届けたかった…」

夜叉は、一筋の涙を流し、息を引き取った。