翌日、真白たちは桜咲家に集まっていた。

琥珀、朱里、瑞樹、蘇芳もいた。

「今から、君たちに前世で起こったことを話そうと思う」

真白たちは背筋を伸ばして聞いた。

「まずは彩葉の母親、蒼葉の話だ」



昔、彩葉という姫巫女が侍女と一緒に暮らしていた。

ある日、蒼葉は貴族たちの前で神楽を舞った。

それは大変美しく、貴族たちを魅了した。

蒼葉は、その中にいた、一人の貴族に求婚された。

その男の名は、霧人(きりひと)といった。

蒼葉は、この結婚には乗り気ではなかったが、相手が貴族と言うこともあって断ることができず、嫁入りした。

嫁ぎ先には、侍女も一緒に連れて行った。

霧人は、冷酷な性格をしており、仕えていた3人の従者たちにも、冷たかった。

名は、飛影、新羅、未影といった。

ある日、霧人の部屋からの大きな音が聞こえた。

蒼葉がのぞいて見ると、新羅が霧人にぶたれていた。

「新羅!」

蒼葉はたまらず飛び出した。

「蒼葉、邪魔をするな」

霧人が冷たい声で言った。

「あなたはなぜ、自分の従者にここまでできるのです?」

「それは、私の命令に背いて、あやかしを逃したからだ」

新羅が話し出した。

「あのあやかしは、害のあるあやかしではありませんでした。ですから祓うことはせず、逃しました」

「だが、この屋敷に無断で入ったものは全て始末しろと命令したはずだ」

「霧人様。お言葉ですが、この屋敷には悪しきものは通さないよう結界を張ってあります。その結界を抜けたと言うことは悪さをするあやかしではないということです」

「蒼葉、お前まで私に口答えするのか」

霧人は、蒼葉を睨みつけた。

持っていた扇子で蒼葉の顔を叩いた。

「蒼葉様!」

新羅が蒼葉に駆け寄った。

「この私に刃向かったこと、ただで済むと思うなよ」

蒼葉は、新羅に付き添われて部屋を出た。

「申し訳ありません。私のせいで…」

蒼葉は笑って言った。

「いいのよ。気にしないで」


次の日、いつもの時間になっても蒼葉の侍女がこなかった。

心配になり、侍女の部屋を覗くと血を流して倒れていた。

鏡華(きょうか)!」

急いで駆け寄った。

「誰か!誰か来て!」

蒼葉が呼ぶと、新羅、飛影、未影の3人がやってきた。

「これは…!」

飛影が目を見開いた。

「飛影!鏡華を助けて!」

「お下がりください。蒼葉様。未影!」

未影も呼ばれて走っていった。

「蒼葉様はこちらへ」

新羅に連れられて、蒼葉の部屋に戻った。

「新羅っ!鏡華が!」

「落ち着いてください。今、飛影と未影が対応しておりますので」

しばらくして、飛影と未影がやってきた。

「処置はしましたが、力が及びませんでした。申し訳ありません」