要が前に出た。

「やってみる」

要は手をかざした。

結界が張られているようだ。

「これを解ければ…」

薄い膜になっているところに手をかざした。

要が術を解こうとした時、電流が走った。

「っ!ダメか…」

要が手を押さえて後ろに下がった。

「これは、なかなか解けないよ。高度の術がかけられているからね」

後ろにいた蘇芳が言った。

蘇芳は鈴を取り出して、結界に当てた。

すると、ヒビが入り割れた。

「これで入れるよ」

みんなはあっけに取られた。

「なんで、俺たちに力をかすんだ。何が目的だ?」

要が蘇芳に言った。

「別に目的はないよ。ただの気まぐれだ。さぁ早く行こう」

そう言われて、真白たちは先に進んだ。

周りには邪気が覆っている。

「祓いながら進むぞ」

紫音が刀、天音が扇子、結奈が笛、花蓮が弓矢を出した。

「それで、邪気っていうのを祓えるの?」

春香が尋ねた。

「うん。私たちは退魔師だから」

天音が答えた。

(私も昔、同じようなことをやってた気がする)

春香は、なんとなく思い出していた。

自分が前世で何ものだったのか。


春香の前世は、帝に仕えていた術者の妻だった。

寿人(かずひと)様」

術者の名前は寿人と言った。

清華(せいか)、今帰った」

寿人が清華の隣に座った。

「帝から頼まれごとをされてな。あやかしの討伐に行ってくる」

「そのあやかし、殺さずにうちに連れてきてください」

「なぜだ?また何か視えたのか?」

「はい。あなたがお帰りになってからお話しします」


(あれは、確かに生徒会長だった。前に見た夢にも出てきたから、やっぱり私と生徒会長は昔、夫婦だったんだ)

「春香?どうしたの?」

真白が振り返った。

「ううん。なんでもない」



「まずいってどう言うことですか?」


湊は千輝に聞いた。

「あいつが生まれ変わったのだとすれば、間違いなく柏木さんたちを狙うはず。前世の恨みでもあるから」

「でも、真白ちゃんたちは、あなたに殺されたと思っています。ちゃんとした説明をしないと信じてはもらえない」

「その説明を、湊に頼みたいんだ。全てを知っているのはお前だからな」

「わかりました。そのためにも早くここから出ないと」

「ここにいることを向こうにわかってもらえればいい」

慧が指笛を吹いた。



「今の音、向こうから聞こえた!」

真白が言って、鈴が聞こえた方へ向かった。

「生徒会長!」


真白たちが走ってくると、湊、慧、千輝の3人がいた。

「なんで先生たちまで…」

「一緒に閉じ込められたんだ。早く出よう」

「これで一安心だね」

蘇芳が言った。


「蘇芳!…お前も一緒だったのか」

湊が蘇芳と少年をみて驚いていた。

「その前に、邪気をどうにかしないとね。君、真白に扇子を貸してくれるかい?」

「え?なんで?」

「いいから」

天音がよくわからないまま、扇子を真白に渡した。

「真白、それを邪気に向かって、あおいでごらん」

「う、うん」

真白が言われたとおりに扇子をあおいだ。

すると、周りにあった邪気が一気になくなった。

「なにこれ…」

「その扇子は、元々蒼葉(あおば)のものだからね。彩葉が四人の従者たちにわたしたんだ。扇子、弓矢、笛、刀をね」

「え?蒼葉ってだれ?」

「それは俺から説明するよ。まずはここを出よう」