「手が空いてるやつ、宣伝してきてくれないか!」

「まだ呼び込むのかよ…」


手が空いていた紫音は、看板を持って宣伝に行った。

「おい、お前らもいくぞ」

「え?俺たちも⁉︎」

帽子屋の格好をした要と執事の格好をした隼人が言った。

「お前らいた方が客取りやすいだろ」

「えぇ…この格好で行きたくないんだけど」

「そもそも執事なんてアリスにいないよね?」

二人がぶつぶつ言っているのを無理やり引っ張っていった。

「アリスの脱出ゲームやってまーす!ぜひいらして下さーい!ほら、お前らも声出せ」

「お、お待ちしてます…」

そこに湊が通りかかった。

「それ、帽子屋?隼人はなんで執事の格好なんかしてるの?」

おかしそうに笑った。

「これは…無理やり着せられて…」

「似合ってるじゃないか。ところで一年の出し物はどこでやってるの?」

「案内します!」

隼人が湊を連れて行ってしまった。

「あ、一人だけ逃げるな!」


「いつも一緒にいる人はいないんですか?」

隼人は、疑問に思って尋ねた。

「あぁ、あいつはあとで合流するんだ」

「ここですよ」


隼人は、脱出ゲームが行われている会場まで湊を連れてきた。

「あ、生徒会長。きてくれたんですか」

受付には、アリスの格好をした真白と、白うさぎの格好をした春香がいた。

「二人とも似合ってるよ」

「ありがとうございます。これを持って、中に入ってください」

真白はスタンプラリーのカードをわたした。

「ありがとう」

渡されたカードを持って湊は中に入った。

「すごいな」

中はとても幻想的だった。

その時、妙な気配がした。


「何だ、この禍々しい気配は…」

「本当に素晴らしいですね。高校生が作ったとは思えない」

湊の後ろに青年がいた。

(こいつは…!)


「今入っていった人、花屋の店員さんかな?」

春香は、今入っていったお客さんに見覚えがあった。

「そうなの?」

真白が尋ねた。

「学校の近くに花屋さんができたの。その時いた店員さんに似てた気がする」

「そうなんだ、私も今度行ってみようかな」

「はぁ…疲れたー」


紫音と要が帰ってきた。

「お前声小さすぎ。もっと大きい声でやらないと意味ないだろ」

「でも、写真撮ったついでに呼び込みもしたんだから、結果的にはよかっただろ」

要はぐったりした様子で椅子に座った。

「おかげで、お客さんたくさんきたよ。お疲れ様」

「なら、よかった」


(さすがに疲れてきた…)

花蓮は、ずっと中でスタンプを押す役をやっていた。

まだ、一回も休憩をとっていない。

「誰かに変わってもらおう」

外にいる、生徒に声をかけて、変わってもらった。

「はぁ、やっと休める」

裏から出ると、慧と千輝に会った。

「お疲れ様、休憩?」

千輝に聞かれた。

「…はい」

(この人、本当に前世で私たちを殺したの?)

花蓮は、千輝をじっと見た。

詳しいことはわからないので、変な態度をとるわけにもいかない。

一言だけ言って、花蓮はその場を離れた。