春香は、屋上で風にあたっていた。

「本条さん。こんなところで何してるの?」

湊が弁当を持ってきた。

「お昼ご飯、もう食べたの?」

「実は、家に忘れてきちゃって。財布もお金が足りなくて、今日は我慢するしかないですね」

あははと春香が笑った。

「じゃあ、俺の弁当食べない?いつも多めに作ってもらうんだ。こいつの分もあるから」

夏祭りの時に一緒にいた少年がいた。

(同じ学校だったんだ…)

「でも、いいんですか?」

「うん。大丈夫だよ。な?」

隣の少年もコクリと頷いた。

「ありがとうございます」

春香は、湊の隣に座った。


「最近元気がないけど、大丈夫?」

「え?」

「このまえもそうだったし。あれ以外に何か悩み事があるの?」

「あ、いえ…」

「ならいいけど、何かあったら言ってね」

ふと、湊の隣を見ると、白髪で銀色の目をした少年が、凄い勢いで弁当を食べていた。

「その人、お腹空いてるんですか?」

「こいつは、いつもこうだから気にしないで」

かなりの大食いなのだろうか?

すでに半分くらいこの少年が食べている。

「あ、お弁当、足りる?」

「大丈夫です。いつものお弁当と同じくらいの量は食べたので」

「そっか。よかった。ところで、一年生は文化祭で何やるの?」

「アリスをモチーフにした、脱出ゲームです」


「へぇ。面白そうだね。俺も行ってみようかな」

「三年生は何をやるんですか?」

「三年生は各クラスの合同作品で絵を描いたのを展示するだけ。今年で卒業だから、先生たちが存分に楽しめってことでそれになったんだ。受験勉強もあるしね」

これからは、三年生にとっては大事な時期だ。

「そうですよね。その分、今年は楽しまないとですよね、当日、お待ちしてます」


旧校舎に白髪の少年がやってきた。


「久しぶりだね」

どこからともなく蘇芳が現れた。

少年は蘇芳に目を向ける。

「君は本当に無口だね。ずっとその姿でいるのは疲れるだろう。たまには元の姿に戻ったらどうだ?」

少年は素通りしていってしまった。

「もしかして、この間のことを怒っているのか?仮にももと主人に手荒な真似をするわけがないだろう。まさかあの時君がみていたとは思わなかったんだ」

真白と要と結奈が蘇芳に会った時に、この少年も遠くから見ていた。

「あれはほんの冗談でやっただけだ本気じゃない」

少年が蘇芳を睨んだ。

「しかし、あの君が人間に味方しているなんて今でも信じられないな」

少年の目が光った。 

「なぁ、鵺」


少年は美しいあやかしの姿になった。