「何か届いてる…これって私宛?」

白い封筒には、真白の名前が書かれていた。

「なんだろうね?開けてみたら?」

真白は、封筒を開けてみた。

中に入っていたのは、手紙だった。

『真白。十六歳の誕生日おめでとう。本当は一緒に祝いたかったけど、それができないことを許してください。
お父さんとお母さんがこうして手紙を出したのは、ある約束を果たすためです。この手紙が届いてすぐに迎えがやってくると思います。その人たちがきっとあなたを幸せにしてくれる。これから色々大変だと思うけどあなたならきっと大丈夫。お父さんとお母さんは、あなたの幸せを願っています』

真白は、手紙を読んでわけがわからなくなっていた。

「これ、どういう事?どうしてお父さんとお母さんから手紙が届くの?」

二人で顔を見合わせた。


「あなたたち何してるの?」

叔母が帰ってきた。

真白は慌てて手紙を隠した。


「お母さん、おかえりなさい」

「お、おかえりなさい」

叔母は、不審そうに二人を見た。

「あなたたち、何か隠してるの?」

視線が、手元に向いた。

「あら、服を買ったの?春香」

「こ、これは私のじゃなくて、真白の服。誕生日プレゼントに」

すると、叔母の表情が変わった。

「あなた、そんなことに使って…勿体無いでしょう?真白には服なんていらないわよ。今あるのを着てればいいんだから」

「お母さん、なんで真白にはちゃんとした服買ってあげないの?真白がかわいそうだよ」

「それは、わざわざ引き取ってあげてるんだから、贅沢なんていうもんじゃないわ。ご飯食べさせてあげてるだけ、感謝して欲しいわね」

そう言い残すと、台所に歩いて行った。


「なんなのあの言い方!ムカつくんだけど!」

春香は勢いよくドアを閉めた。

「春香、落ち着いて」

真白は興奮している春香を宥めた。

「だって、いくらなんでもあんな言い方しなくてもっ」

「いいから。気にしないで」

真白が物を買って機嫌が悪くなるのはいつものことだ。

「それよりもこの手紙…」

真白は持っていた手紙をもう一度読んだ。

「この手紙に書いてある通りだとすると、真白のことを誰かが迎えにくるってことだよね?」

誰か、私のことを引き取ってくれる人でもくるのだろうか?


その日の夕ご飯の時間。

「あなた、聞いてよ。春香ったら、真白に自分のお小遣いはたいてまで、ワンピースなんか買ったのよ。春香、言っておくけどあのお小遣いだってお父さんが働いてきたお金から出てるんだからね」

叔母が夕飯の時に、叔父に昼間のことを話していた。

バンッ!と春香が箸を置いた。

「いい加減にしたら⁉︎真白に何の恨みがあるか知らないけど、そこまで言うなんて人としてどうかしてるよ!」

「春香…」

「お父さんもなんか言ってよ!」

春香は黙っている叔父を睨んだ。

「…今日、手紙がきてなかったか?」

静かに言った。

「手紙なんて何も…」

叔母がそう言いかけた時、

「きてたよ手紙。真白宛に」

春香が言った。

「なら話が早い。真白は十六歳になったら、その家で暮らすことになっている」

「え?」

最初から知っていたような口ぶりだ。