「と、言うことは、あとは鬼神の蘇芳を味方につければいいだけだ」

蘇芳には、あれ以来会えていなかった。

そもそも会う方法なんてあるのだろうか。

「なんだ、お前たち蘇芳に会ったのか」

朱里もやってきた。

「蘇芳を味方につけるのは難しいぞ。なにしろ奴はもともと縛られるのを嫌っていたからな」

「じゃあ、なんで彩葉の眷属に?」

「あの時の蘇芳は虫の息だったからな。あと少し遅ければ命を落としてもおかしくない状態だった。それを彩葉が助け、蘇芳は眷属となることを決めたのだ」

つまり命を助けられたから、眷属になることを決めたと言うことだ。

「どうすればいいの?」

「蘇芳に認められればいい」


真白は着替えを済ませたあと、要を自分がの部屋に入れた。

「それで、何か用事があったんでしょ?」

「うん…」

要は何か言いづらそうにしている。

「要?」

「…いや、やっぱりまた今度にする」

屋敷までやってきたのに、何も言わずに帰ってしまった。

(要、どうしたんだろう)



春香は、夢を見ていた。

自分が貴族で夢見の力を持つ、女性の夢を見た。

一人の男性が隣にいて、どうやら夫のようだった。

その顔は、誰かに似ていた。

 
「昨日の夢はなんだったんだろう…」

「本条さん?」

歩いてきた湊に声をかけられた。

「生徒会長」

「元気がないけど、どうしたの?」

春香は、昨日また夢のことを話した。

「…それは、もしかしたら前世の記憶じゃないかな。何かをきっかけに前世の記憶が戻る人は珍しくない。最近何か変わったことはなかった?」

(最近、変わったこと…)

春香は、この前行った花屋で倒れたことを思い出した。

「新しくできた花屋さんの前を通りかかって、店員さんの顔を見た途端倒れました」

だが、しばらくは何もなかった。

「その店員さんに見覚えはあった?」

「なんとなく、どこかであった気がするんですよね。初めて会ったはずなのに」


「その夢には、他に誰か出てきた?」

「そう言えば…生徒会長にそっくりな男性が出てきました」

「俺に?」

そこまで話した時、湊は同級生らしき生徒に声をかけられ去っていった。

(でも、その人が夫かもしれないなんて言えないけど…)


紫音、天音の二人は、衣装作りをするグループになった。

「いてっ」

紫音は針で指を刺してしまった。

「なにやってんの?」

隣で見ていた天音が声をかけた。

「針で刺した…」


「血、出てるじゃない。保健室行かなきゃ」


「なんで天音までついてくるんだよ」

紫音の後ろを天音がついてきた。

「私もずっと作業してて疲れたから休憩ついで」

保健室に行ったが、養護教諭はいなかった。