千輝のことは怪しかったが、何もわからない以上、できることはなかった。

今は学年全体の合同授業だった。

真白たちの学校はクラスごとの出し物ではなく、学年全体で出し物をしようと言う学校だった。

各クラスから実行委員が選ばれ、そのメンバーが中心となって、文化祭の準備をするのだ。

「何か案のある人はいますかー?」

「私、コスプレしてカフェやりたい!」

「お化け屋敷だろ!」

「迷路とかは?」

「私は劇がやりたいなー」

いろんなアイデアが出た。

「うーん、一年生はクラスが多いからね。大規模なことできそうだけど…」

「じゃあ、アリスはどう?」

学年で一番成績のいい、笹岡さんが言った。

「アリスだったらクラスでコスプレできるし、不思議な世界に迷い込む話だから、脱出ゲームみたいな感じにできる。お客さんでクリアした人にはお菓子をプレゼントすればいいし、ストーリーはオリジナルにしてもいいと思うの。どうかな?」

「面白そう!」

「いいかもな」

賛成の声が多く上がった。

「それでは、アリスをコンセプトにした脱出ゲームをやりたいと思います」


役割分担は、クラス混同でやることになった。


真白は、要と結奈と一緒のグループになった。

小道具や背景を作るグループだ。

他には衣装を作るグループ、プレゼントでお菓子を作るグループ、脚本グループに分かれた。

「文化祭って十一月にやるんでしょ?私たちの学年、結構大掛かりなことしてるけど、大丈夫なのかな?」

真白は心配そうにいった。

「人数多いし、大丈夫だと思うよ。それにうちの学年に結構演劇部とか料理部とかいるから」

結奈は笑って言った。

「俺は手先が器用じゃないから、こっちでよかった」

男子は、背景を作るグループが圧倒的に多かったため、くじ引きをしたのだ。

要は運良く希望するグループに入ることができた。

「紫音と黒崎くんは、希望したのと違うところになったんでしょ?」

結奈が要に聞いた。

「確か、紫音が衣装で隼人が脚本だった」


その日は各グループでリーダーを決めて、どんなふうにしていくのかを話して解散になった。

「真白、一緒に帰ろう」

要に声をかけられた。

「うん」

「最近、いろんなことがあったけど、大丈夫?」

「あぁ、うん。大丈夫」

夏祭りの時は蘇芳、二学期になってからは千輝がやってきた。

どれも、私の前世や現世での過去に関することだった。

「今日は、屋敷に少し寄ってもいいかな?」


「お邪魔します」

要はそう言って屋敷に上がった。

「なんだ、またきたのか小僧」

琥珀がやってきた。

「少し邪魔するだけだよ」

「帰ったのか、真白」

瑞樹もやってきた。

「誰?」

「蛇神の瑞樹。屋敷の裏にある祠に封印されてたの」

「え?だって、前見た時は何も感じなかったのに」

「それは私の妖力を伝えることができないほどの強い術で封印されていたからだ。最近、ようやく術に綻びができたので、自力で破ろうとしているところに真白がきて術を解いてくれた」