春香は、気がつくとソファに寝かされていた。

「大丈夫ですか?」

花屋の店員が春香の前にしゃがんだ。

「あ…はい」

(私、この人をみた途端倒れなかった?)

「熱中症でしょうか?まだまだ暑いですからね。今、水を持ってくるので待っていてください」

店員は立ち上がって水を取りに行った。

春香はあの店員の顔をどこかでみた気がした。

「湊さん!」

真白と要と隼人の三人は、生徒会室にやってきた。

「いないな…」

生徒会室には誰もいなかった。

「旧校舎の方にいるのか?」

三人は旧校舎に向かった。

「生徒会室にいなかったら大体ここにいると思う」

空き教室から、物音が聞こえた。

「ここか?」

隼人がドアを開けた。

そこには、一人の少年が床に倒れていた。

「え⁉︎」

三人が驚いていると、湊がやってきた。

「あれ?みんなどうしたの?」

「生徒会長!人が倒れて…」

湊は床に倒れている少年を見た。

「こいつまたこんなところにいたのか。おい、起きろ」

湊が体を揺さぶると、少年は目を開けて起き上がった。

「あ!」

真白は少年の顔を見て声をあげた。

以前廊下ですれ違った白髪の青年だった。

「こいつは俺の友達だよ。あまり話さないけど、悪いやつじゃない」

少年はニコニコ笑っている。

「ところで何しにきたの?」

「実は…」

真白たちは、千輝のことを話した。

「ああ、その人なら高嶺先生と一緒にうちに修行にきていたんだ。俺も知ってるけど、いい人だよ」

「でもあの人は前世で彩葉の屋敷を襲ったんですよ」

「俺もあの人に会ったときから違和感を感じて、調べてたんだ。何かわかったら教えるから」


「すみません。ありがとうございました」

春香は、店員に頭を下げた。

「いいえ。気をつけてくださいね。あ、ちょっと待ってください。これを持っていってください」

店員が花を持ってきた。

「コリウスです。よかったらどうぞ」

「でも、今財布持ってないんです」

「いいですよ。お代はいりません。お客様は記念すべき一人目のお客様なのでサービスです。よろしかったら、またいらしてください」

(なんでこの花くれたんだろう?)

春香は不思議に思いながら歩いた。

「花言葉は叶わぬ恋ですよ…」

店員が、後ろ姿を見守っていた。