先生が次々に名前を呼んでいく。

「神崎、神崎要(かんざきかなめ)!遅刻か?」

すると、教室のドアが開いた。

「…すみません、遅れました」

一斉にドアに注目が集まる。

「…早く席につけ」

神崎要と呼ばれた人は、静かに席に座った。

「なぁ、あいつって…」

「ずっと休んでたやつだよな?」

「怪我したって他のクラスの子に聞いたけど…」

ヒソヒソと何人かが話している。

あの人って…

いつも夢に出てくる白夜にそっくりだった。

そう思っていたら目が合った。


お昼休み。

真白のお弁当は作ってもらっていないので、コンビニで買ったパンを春香と一緒に食べていた。

「真白。今度一緒にお弁当作ってみない?そしたら、お母さんも何も言わないだろうし」

「うん。ありがとう。でも、大丈夫だから」

「そっか…そうだ!真白、今日誕生日だよね?」

「あ、忘れてた」

そう、今日は真白の十六歳の誕生日だ。

「去年はペンケースだったから、今年は絶対服にするから!一緒に見に行こう」

「でも服は…」

新しい服なんか買ったら、叔母が怒るのは想像できた。

真白は今まで、春香の着なくなった服や、安物の服しか着たことがなかった。

「いいの!大体お母さんたちはなんで真白を虐待みたいなことするんだろう?こんなのおかしいよ」

「別に暴力とか振るわれたわけじゃないし、平気だよ」

「そんなことない!真白は私の大事な家族なんだから、真白には辛い思いしてほしくないの」

「春香…ありがとう」


放課後になって真白と春香はショッピングモールにやってきた。

「これなんかいいんじゃない?」

春香が桜色のワンピースを見せた。

「そんなに可愛いの、私には似合わないよ…」

「真白は可愛いから絶対似合うよ。着てみよう?」

真白は言われるがまま、試着室に入った。

「すっごく似合ってる!これ買って帰ろう」

「でも…高そうだけど」

「大丈夫!お年玉とかお小遣いとか貯めておいたから。これにしよう。ね?」

春香に押し切られる形で誕生日プレゼントをもらった。

「怒られないかな…」

今までもらったプレゼントは、小物だったのでバレなかったが、服だときっと怒られてしまうだろう。

「なんで真白が怒られなきゃいけないの?お母さんが何か言ってきたら、私から言うから大丈夫だよ」

真白は不安な気持ちになりながら、家に帰った。


「ただいまー」

家に帰ると、まだ誰もいなかった。

「お母さん、パートに行ってるのかも」

郵便受けには、郵便物が届いていた。