「こんな暑い日まで部活とかきつい…」

部活が終わったあと、国語準備室の前を通りかかった。

(あ…高嶺先生)

何か書いているようだ。

(何してるんだろ)

ドアに近づいた拍子に顔をぶつけてしまった。

「ん?」

高嶺がドアに近づいてきた。

「本条、何してるんだ」

しゃがみ込んでいた春香に高嶺は尋ねた。

「先生がいたので、何やってるのかなと思って…」

「前は階段から落ちそうになってたし、今度はドアに顔ぶつけたのか。鼻、赤くなってるぞ」
春香は鼻を抑えた。

「ははっ冗談だよ。赤くなんかなってない」

(笑った顔、初めて見た…)

高嶺は、女子に人気はあるが、無表情なことが多いため、怖がっている生徒もいた。

「学校にいるってことは、部活か」

「はい。陸上の」

高嶺は以外な顔をした。

「陸上が好きなのか?」

「はい。走り高跳びが得意です」

「そうか」

「あの…先生は夏祭りに見回りでくるんですよね?」

「あぁ、他校生同士の喧嘩とかが毎年あるからな。そういうことの防止も兼ねて、祭りに参加する」

「そうなんですね」

「そんなことより、早く帰れ。これからもっと暑くなるから、外にはあまり出ないようにしろよ」

「はい。わかりました」

高嶺に頭を下げて、春香は家に帰った。