「俺、丈夫だから平気だよ」

「だとしてもダメ。これ、私たち三人のお金で買ってるんだから」

「わかったよ」

紫音はそう言って立ち上がった。

「じゃあ今度買うときは俺の分も買ってきて。ちゃんと払うから」

そう言ってジュースを飲み干すと行ってしまった。



要は、アパートの前にやってきた。

「隼人、荷解き終わったか?」

「要、どうしたんだ?」

「手伝いに来たんだけど、もうほとんど終わってたな」

部屋の中はほとんど片付いていた。

「ちょうど終わったところだ。今飲み物出すから、座ってろ」

隼人は、麦茶を二つ用意した。

「でも、なんでいきなり引っ越しなんかしてきたんだ?親が出張の時はおばあさんの家に行ってただろ?」

隼人は暗い表情になった。

「この間、亡くなった。心臓発作で」

「え?でも去年はあんなに元気で…」

隼人は麦茶を一口飲んだ。

「もともと心臓が弱ってたみたいなんだ。それを俺に隠してたみたいで、心配かけたくなかったんだろうけど」

「そうか…俺も小さい時は世話になったから、驚いた。それで転校してきたんだな」

「それもあるけど…」

「他に何かあるのか?」

「真白に会いたかったから」

要は麦茶を持った手を止めた。

「幼馴染、なんだよな」

要は目を逸らして麦茶を飲んだ。

「真白が引っ越す時に、必ず会いに行くって約束したんだ。真白はもう忘れてるだろうけど」

「お前、本当に真白が好きなんだな。俺は前世の記憶が戻ってなかったら、真白を好きにならなかったかもしれない。でも目があった時、好きになった。やっと会えたって」

「俺は前世でも真白…あの時の名前は彩葉か。彩葉のことが好きだったけど、彩葉はお前を好きになった。だから身を引くしかなかったんだ」

隼人は、要をまっすぐ見た。

「今度は、結果がどうなっても、何も伝えずに終わりたくない」


「ただいまー暑かったぁ」

天音は、一軒家に帰ってきた。

「おかえり。暑かったでしょ?ありがとね」

結奈がバックを受け取った。

「少し溶けてるかもしれないから、冷やしてからの方がいいかも」

「じゃあ、しばらく冷やしてから食べよ。はい水」

花蓮が天音に水を渡した。

「ありがとう」

天音は水を一気に飲んだ後、ソファに座った。

「アイス買った帰りに、紫音見かけたよ」

「なにしてたの?」

花蓮が尋ねた。

「部活だって。この暑いのによくやるよねー」

「あ、私も明日部活だ。確か結奈もだったよね?」


「でも私は家でもできるから。暑いの苦手だし、家でやろうかな」

「えー私だけ暑いなか学校行くの辛い」

「じゃあ明日、花蓮の好きなカップケーキ作って待ってるから。帰ってきたら一緒に食べよう」

結奈が言った。

「うーん、じゃあ頑張ろうかな」