次の日、真白は図書館で宿題をやっていた。

「真白」

「神崎くん」

声をかけてきたのは要だった。

「偶然だね。真白も宿題しにきたの?」

「うん」

「隣、座ってもいい?」

しばらく宿題を進めていた。

真白がふと隣を見ると、要の手が止まっていた。

「わからないところとか、ある?」

「うん。ここなんだけど…」

その単元は四月から五月にかけてやっていた単元だ。

この時、まだ要は学校にきていなかった。

「それはね、ここをこう…」

ある程度宿題を終えた二人は図書館を出た。

「教えてくれてありがとう」

「ううん」

「そうだ。何かお礼させて」

図書館の近くに公園があった。

そこにソフトクリームのワゴンが止まっていた。

「暑いから、ソフトクリーム食べない?」

要はソフトクリームをふたつ買ってきてきて、真白に渡した。

「ありがとう」

ベンチに座って、食べた。

「そういえば、神崎くんって…」

「もし嫌じゃなかったら、名前で呼んでくれないかな。この苗字あんまり好きじゃないから」

「え?」

「ダメかな?」

「そういうわけじゃないけど」

結奈と同じことを言っていた。

「か、要…」

「うん。ありがとう」

溶ける前にソフトクリームを食べ終えた。

「ソフトクリーム、ありがとう」

「いや、俺も入院してたせいで初めの方わからないところあったから。教えてくれて助かったよ」

「怪我してたんだよね?もう大丈夫なの?」

「うん。傷跡は残っちゃったけど」

要が前髪を掻き上げた。

額のところに痛々しい傷があった。

「父親と喧嘩して、その時に。腕の骨も折れてたから、退院するまで時間かかった」

(親子喧嘩でこんな傷を残したり、骨折するほどのことをしたの?)

「退院してからは、親とは別々にくらしてるんだ」

何か事情がありそうだが、真白には聞いていいのかわからなかった。


その頃、春香の家では…

「ダメよ」

「なんで?私もう高校生だよ。夏祭りだって友達誘ったから。少しくらいいいでしょ」

「春香、なんで最近反抗的な態度ばかりとるの?」

「反抗なんかしてないよ。お母さん、いつもそうだよね。私が友達と遊びに行こうとすると引き止めて、買い物だって、真白以外としたことない。私だって学校の友達と遊びたいの!」

「どうした?」

父がやってきた。

「あなた、春香が今度の夏祭り、友達と行きたいんですって」

「いいんじゃないか?」

「ほんとに⁈」

春香が喜びの声を上げた。

「あなた!」

「春香だってもう高校生だ。少しくらい友達と遊ばせてやれ」

「ありがとう!お父さん!」



「あっつい…」

紫音は炎天下の中外を歩いていた。

部活の帰りだ。

剣道であれだけ汗をかいたと言うのに、再び汗が滲んできた。

「ダメだ…このままじゃ倒れる」

紫音は自動販売機でジュースを買った。

「紫音?何やってんの?」

「天音?」

買い物袋を持った天音がいた。

「部活の帰り。暑くて死にそうだから、ジュース飲んでたんだよ」

「そうなんだ。私もアイス買ったとこ。花蓮と結奈は夏バテしてて留守番」

「アイスあるんなら一つちょうだい」

「あんたジュース飲んでるんだからいらないでしょ。冷たいものばっかり食べてたらお腹こわすよ?」